『中干し、穂肥え』
5月20日に田植えした稲が好天(暑すぎる)に恵まれ、順調(育ちすぎ)に分結(一株15本位が目安)生育して、穂が顔を出す準備をはじめたようです。ここいらで水を一旦抜き、中干し(地面が少しひび割れする位)をし、根に酸素を供給してやります。そして、再び水を入れ、穂肥えに有機肥料(アグレット)を施します。これによって、稲は穂への栄養分を得て花を開花させ、穂を実らせるのです。
従来からの農法では、元肥、追肥(2~3回)、穂肥え、実肥えを施し、その間に除草剤(2~3種類)散布、そして、穂が出る前にカメムシ、ウンカ等の害虫防除のための農薬散布を一斉に行います。また、その間、何度となく繰り返される畦の草刈りと、連日の猛暑の中での作業が続くのです。米作りってホント大変です。その昔は、殆どの作業を人力・足を地につけ、手作業でやっていたのです。今は機械化しているとは言え、草刈りなどの手作業も含めてすべて、炎天下での作業なのです。百姓ってホント大変です。
有機無農薬の稲作では、肥料は、田んぼにある有機物(前年の稲刈りで残された藁、籾殻、雑草、虫などの死骸等)と、元肥えとして、生ゴミの堆肥をほんの少し施し、田植えの後、草を抑えるために蒔く米ぬか、そして、穂肥え(土が肥えているとやらない)と、いたってシンプルです。がしかし、田んぼの中に入る回数は、同じ有機無農薬栽培でも人によって、また、やり方によって多少違いはありますが、私の場合は、とにかく、肥料蒔きから除草まで、ひたすら田んぼに入ります。(トホホ) しかし、朝早く起きて、涼しい間に、ボチボチ、ほどほどに、できるだけ楽しみながら作業するようにしています。決して命までは掛けません。
そんな訳で、順調にいけば、昨年同様に9月の初旬には稲刈りできると思います。
因みに、周りの農家では、8月のお盆明け頃から、稲刈り(花越前という品種)が始まり、8月中には、コシヒカリなど殆ど稲刈りは終わっています。ひと昔前から見れば、1ケ月以上、その昔から見れば、2ケ月以上も早くなっているのです。
従来からの農法では、元肥、追肥(2~3回)、穂肥え、実肥えを施し、その間に除草剤(2~3種類)散布、そして、穂が出る前にカメムシ、ウンカ等の害虫防除のための農薬散布を一斉に行います。また、その間、何度となく繰り返される畦の草刈りと、連日の猛暑の中での作業が続くのです。米作りってホント大変です。その昔は、殆どの作業を人力・足を地につけ、手作業でやっていたのです。今は機械化しているとは言え、草刈りなどの手作業も含めてすべて、炎天下での作業なのです。百姓ってホント大変です。
有機無農薬の稲作では、肥料は、田んぼにある有機物(前年の稲刈りで残された藁、籾殻、雑草、虫などの死骸等)と、元肥えとして、生ゴミの堆肥をほんの少し施し、田植えの後、草を抑えるために蒔く米ぬか、そして、穂肥え(土が肥えているとやらない)と、いたってシンプルです。がしかし、田んぼの中に入る回数は、同じ有機無農薬栽培でも人によって、また、やり方によって多少違いはありますが、私の場合は、とにかく、肥料蒔きから除草まで、ひたすら田んぼに入ります。(トホホ) しかし、朝早く起きて、涼しい間に、ボチボチ、ほどほどに、できるだけ楽しみながら作業するようにしています。決して命までは掛けません。
そんな訳で、順調にいけば、昨年同様に9月の初旬には稲刈りできると思います。
因みに、周りの農家では、8月のお盆明け頃から、稲刈り(花越前という品種)が始まり、8月中には、コシヒカリなど殆ど稲刈りは終わっています。ひと昔前から見れば、1ケ月以上、その昔から見れば、2ケ月以上も早くなっているのです。
温暖化地獄
これはただ事ではない!
「“酷暑列島”多治見で39.4度、熱中症死・30年で6倍、年400人、高齢者多く」(23日)
「全国140カ所で猛暑日 最高気温が前日に39度を超えた岐阜県多治見市はこの日も38.9度と全国最高を記録。921カ所ある気象庁の観測点のうち140カ所で35度以上の猛暑日となった。」(24日)と、連日“酷暑列島”の様子を伝える新聞報道。エアコンが売れ、電力の需要もうなぎ登り、連日最高値を更新中とのこと、これはただ事ではない!
凄まじい集中豪雨で各地に洪水や、「深層崩壊」と呼ばれる土砂災害をもたらし、多くの犠牲者を出した梅雨前線が収まった思いきや、息をつく間もなく、この猛烈な暑さ、集中豪雨もそうであったが、この猛暑についても、気象庁の発表や被災地の報告はいずれも、観測史上最高値、あるいは、予想をはるかに超える事態とのことだ。
温暖化による異常気象は日本だけではない。世界中で起こっている。猛暑のロシアで西部、シベリアを中心に2000人が死亡、豪雨の中国南部で洪水による死者が700人超、一方、冬の南半球、南米で寒波が襲来200人以上が死亡したと伝えられる。これは最早ただ事ではない!と多くの人が感じている筈だ。
ところが、こうした異常な雨の降り方や、猛暑と地球温暖化との関連については、極めて曖昧な報道をしていると言わざるを得ない。真実を伝えていないとさえ思える。
降雨量について、ひと昔前(2,30年位前かな)1 時間に30mmの雨と言えば「バケツをひっくり返したような大雨」という表現を使っていた。2000年に入ってから、世界的に雨の降り方が劇的に変わりつつあり、世界中で洪水が頻発、日本でも、1 時間に70~100mmを超える猛烈な雨が降りはじめ、ここ数年で頻発するようになってきている。1 時間に70~100mmの雨とは、まさに、洪水のような雨で、下水は一気に溢れ、道路は川の様相で、山に降った雨は、土石流となって河川に雪崩込み、ほんの僅かな時間に洪水を引き起こすというそんな猛烈な雨のことだ。
猛烈な暑さについては、今まさに連日の猛暑をみれば明らかだ、本日24日、夕刻のニュースによると、35度を超える猛暑となった地点は154カ所、熱中症と見られる症状で病院に搬送された人は全国で、240人、12人が死亡したとのこと。
地球温暖化は確実に加速している。猛烈な雨、猛烈な暑さの原因は地球温暖化に伴う気候変動であり、疑う余地などないというのが、今や国連をはじめ、国連の機関IPCCに参加する科学者、そして、世界各国の共通の認識と言って過言ではないのである。この記事のタイトル“温暖化地獄”は、東大産業技術研究所教授の山本良一氏の著書「温暖化地獄」だ。山本教授は、日本における地球温暖化問題の第一人者と言っていい科学者で、氏によると「地球温暖化はいまや暴走の兆しを見せ始め、わたしたちはすでに、地球温暖化地獄の一丁目に入り込んでしまっている」「地球温暖化の進行は、“温暖化”という言葉のソフトな響きとは裏腹に、人類にとっても他の生物種にとっても地獄の様相をもたらしはじめている」との極めて悲観的見解を述べているが、今、私たちが目の当たりにしている光景が地獄の一丁目の様相なのだ。また、山本教授は、「温暖化そのものは最早止められないが、2℃で食い止めなければ、地球規模で壊滅的な状況が現れはじめる、時間はほとんどない」と指摘し、世界が一致して温暖化防止の行動を起こすことを呼びかけている。
決してよそ事ではない。国も地方自治体も企業も個人も一致して行動しなければ、取り返しのつかない事態を招くことになるということだと思う。
そして、まだ、温暖化をよそ事と考えている方たちも、ひとたび災害に見舞われたとき、自らの身と家族の身を守るのは、最終的には自分自身であることを肝に銘じておくべきではないかと思う。
「“酷暑列島”多治見で39.4度、熱中症死・30年で6倍、年400人、高齢者多く」(23日)
「全国140カ所で猛暑日 最高気温が前日に39度を超えた岐阜県多治見市はこの日も38.9度と全国最高を記録。921カ所ある気象庁の観測点のうち140カ所で35度以上の猛暑日となった。」(24日)と、連日“酷暑列島”の様子を伝える新聞報道。エアコンが売れ、電力の需要もうなぎ登り、連日最高値を更新中とのこと、これはただ事ではない!
凄まじい集中豪雨で各地に洪水や、「深層崩壊」と呼ばれる土砂災害をもたらし、多くの犠牲者を出した梅雨前線が収まった思いきや、息をつく間もなく、この猛烈な暑さ、集中豪雨もそうであったが、この猛暑についても、気象庁の発表や被災地の報告はいずれも、観測史上最高値、あるいは、予想をはるかに超える事態とのことだ。
温暖化による異常気象は日本だけではない。世界中で起こっている。猛暑のロシアで西部、シベリアを中心に2000人が死亡、豪雨の中国南部で洪水による死者が700人超、一方、冬の南半球、南米で寒波が襲来200人以上が死亡したと伝えられる。これは最早ただ事ではない!と多くの人が感じている筈だ。
ところが、こうした異常な雨の降り方や、猛暑と地球温暖化との関連については、極めて曖昧な報道をしていると言わざるを得ない。真実を伝えていないとさえ思える。
降雨量について、ひと昔前(2,30年位前かな)1 時間に30mmの雨と言えば「バケツをひっくり返したような大雨」という表現を使っていた。2000年に入ってから、世界的に雨の降り方が劇的に変わりつつあり、世界中で洪水が頻発、日本でも、1 時間に70~100mmを超える猛烈な雨が降りはじめ、ここ数年で頻発するようになってきている。1 時間に70~100mmの雨とは、まさに、洪水のような雨で、下水は一気に溢れ、道路は川の様相で、山に降った雨は、土石流となって河川に雪崩込み、ほんの僅かな時間に洪水を引き起こすというそんな猛烈な雨のことだ。
猛烈な暑さについては、今まさに連日の猛暑をみれば明らかだ、本日24日、夕刻のニュースによると、35度を超える猛暑となった地点は154カ所、熱中症と見られる症状で病院に搬送された人は全国で、240人、12人が死亡したとのこと。
地球温暖化は確実に加速している。猛烈な雨、猛烈な暑さの原因は地球温暖化に伴う気候変動であり、疑う余地などないというのが、今や国連をはじめ、国連の機関IPCCに参加する科学者、そして、世界各国の共通の認識と言って過言ではないのである。この記事のタイトル“温暖化地獄”は、東大産業技術研究所教授の山本良一氏の著書「温暖化地獄」だ。山本教授は、日本における地球温暖化問題の第一人者と言っていい科学者で、氏によると「地球温暖化はいまや暴走の兆しを見せ始め、わたしたちはすでに、地球温暖化地獄の一丁目に入り込んでしまっている」「地球温暖化の進行は、“温暖化”という言葉のソフトな響きとは裏腹に、人類にとっても他の生物種にとっても地獄の様相をもたらしはじめている」との極めて悲観的見解を述べているが、今、私たちが目の当たりにしている光景が地獄の一丁目の様相なのだ。また、山本教授は、「温暖化そのものは最早止められないが、2℃で食い止めなければ、地球規模で壊滅的な状況が現れはじめる、時間はほとんどない」と指摘し、世界が一致して温暖化防止の行動を起こすことを呼びかけている。
決してよそ事ではない。国も地方自治体も企業も個人も一致して行動しなければ、取り返しのつかない事態を招くことになるということだと思う。
そして、まだ、温暖化をよそ事と考えている方たちも、ひとたび災害に見舞われたとき、自らの身と家族の身を守るのは、最終的には自分自身であることを肝に銘じておくべきではないかと思う。
有機無農薬栽培を考える
冒頭のこのブログの紹介にもありますが、定年を契機にして、2007年3月、大津市からここ高島市今津町に、農ある田舎暮らしがしたくて引越し、4年目を迎えました。そして、集落内の農家のご好意でお借りした田んぼで、有機無農薬による米作りに挑戦して3年が経ちました。実は、大津市にいた頃に、従来の農法による稲作の手伝いを4年、友人と一緒に有機無農薬の稲作にも2回経験したので、稲作暦は8年と半ばということになります。しかし、百姓としては、駆け出しの半人前で、「師匠」と仰ぐ農家の方に教えを乞う毎日です。それでも、昨年あたりから、有機無農薬での米作りに、それなりの手応えを感じるようになってきました。一方、従来の農薬と化学肥料依存型の農法では、早晩立ち行かなくなるのではないかという懸念を強く持つようになっています。
現在の農法は、1960年代から始まったと言われています。それまで使ってきた有機肥料の「堆肥」を止め、農協(JA)の強力な指導のもとに、多収量を第一にして、徹底した機械化と農薬・化学肥料に依存した農法に切り替え、今日まで続けられてきましたが、ここにきて、地球温暖化によるさまざまな悪影響と相まって、従来の農法、とりわけ、農薬と化学肥料依存の農法に、否定的な問題や障害が露呈しはじめているのです。
長年に渡って、米という単一品種を、劇薬、毒物と表示された農薬と、無機質の化学肥料の力だけで栽培してきたのです。土壌本来の持つ地力(肥沃度)はなくなり、農地は収穫を重ねるごとに痩せていっているのです。肥沃な土壌は、多様な微生物の働きによって作られると言われていますが、農薬と化学肥料によって、微生物の働きはきわめて弱いものになっているのです。また、痩せた農地では、病害虫に対しても弱く、逆に、病原菌や害虫が、変異して、農薬に耐性を持ちはじめ、気温の上昇の中で、越冬、増殖をはじめているのです。除草剤も効かなくなっており、さらに強力な除草剤を開発するか、わたしのように田んぼに入り、人力で抜くしか手はないという笑うに笑えない状況になっているのです。
しかし、高齢化と後継者不足によって、農家は機械と農薬が頼り、今更、田んぼの中には入れません。ましてや、これまでの、農法や農協からの脱却など考えられないのが偽らざる現実です。それでも、地球温暖化に伴う気候変動の影響は待ったなしで、頻度も強度もますます激しさを増すでしょう。農作物への影響も風水害に加えて、容赦なく降り注ぐ有害な紫外線や、異常高温により様々な障害が出てくることは避けられません。さまざまな対策が必要になってくると思います。暑さに強い品種改良もそのひとつですが、ただ暑さに強いだけでなく、病害虫にも強い、有機物が豊富にあり、多様な微生物がたくさんいて、病害虫の天敵となる虫や鳥たちが、バランスよく共に生息(共生)するような肥沃な農地に戻すことこそが、いま真剣に求められているのではないかと考えます。
現在の農法は、1960年代から始まったと言われています。それまで使ってきた有機肥料の「堆肥」を止め、農協(JA)の強力な指導のもとに、多収量を第一にして、徹底した機械化と農薬・化学肥料に依存した農法に切り替え、今日まで続けられてきましたが、ここにきて、地球温暖化によるさまざまな悪影響と相まって、従来の農法、とりわけ、農薬と化学肥料依存の農法に、否定的な問題や障害が露呈しはじめているのです。
長年に渡って、米という単一品種を、劇薬、毒物と表示された農薬と、無機質の化学肥料の力だけで栽培してきたのです。土壌本来の持つ地力(肥沃度)はなくなり、農地は収穫を重ねるごとに痩せていっているのです。肥沃な土壌は、多様な微生物の働きによって作られると言われていますが、農薬と化学肥料によって、微生物の働きはきわめて弱いものになっているのです。また、痩せた農地では、病害虫に対しても弱く、逆に、病原菌や害虫が、変異して、農薬に耐性を持ちはじめ、気温の上昇の中で、越冬、増殖をはじめているのです。除草剤も効かなくなっており、さらに強力な除草剤を開発するか、わたしのように田んぼに入り、人力で抜くしか手はないという笑うに笑えない状況になっているのです。
しかし、高齢化と後継者不足によって、農家は機械と農薬が頼り、今更、田んぼの中には入れません。ましてや、これまでの、農法や農協からの脱却など考えられないのが偽らざる現実です。それでも、地球温暖化に伴う気候変動の影響は待ったなしで、頻度も強度もますます激しさを増すでしょう。農作物への影響も風水害に加えて、容赦なく降り注ぐ有害な紫外線や、異常高温により様々な障害が出てくることは避けられません。さまざまな対策が必要になってくると思います。暑さに強い品種改良もそのひとつですが、ただ暑さに強いだけでなく、病害虫にも強い、有機物が豊富にあり、多様な微生物がたくさんいて、病害虫の天敵となる虫や鳥たちが、バランスよく共に生息(共生)するような肥沃な農地に戻すことこそが、いま真剣に求められているのではないかと考えます。
これからの10年をどう生きるのか
この文章は、2006年12月に書いたもので、4年が経過しょうとしていますが、地球温暖化が加速し、4年前に懸念したことが、現実になってきていると日々実感しています。”つぶやき”にしては少し長い文章ですが、お読みいただき、共感あるいは、これからの生き方の参考にしていただければ幸いです。
これからの10年どう生きるのか
21世紀に入り早6年が終わろうとしている。21世紀は「環境の世紀」と言われて久しい。環境とは、勿論かけがえのない地球環境のことだ。人類を含むこの地球上に生息するすべての生物種にとっての地球環境であることは云うまでもない。「環境の世紀」と言うからにはそれなりの根拠がある。加速する地球温暖化に対して今すぐに手を打たなければ、人類にとって取り返しのつかない事態を招くことになるという事実があるからに他ならない。
2006年6月18日イギリスのシンクタンク・オックスフォードリサーチ・グループが、21世紀、人類の直面する「真の脅威」は地球温暖化であるとの報告書を発表した。ブッシュ政権の「テロとの戦い」は「真の脅威から目を逸らさせることにある」ことも付け加えた。
地球温暖化の脅威は今まさに目前に迫っているという見解である。このままだと100年後には地球環境は大変なことになっているというような100年先の話をしているのではない。
そして、2006年12月、月刊日経『エコロジー』誌上で、イギリスの科学者であり、「ガイア学説」の提唱者である、ジェームズ・ラブロックが「地球温暖化は既に引き返せる地点を越えてしまった」との悲観的見解を示した。
こうした見解は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)や多くの科学者の間でも共通の認識になりつつある。
同時にラブロックは、「今後、どんなエネルギー源を選択していくべきか、という問いに1つの答えはない」としながらも、化石燃料に代わるエネルギーについて、原子力エネルギーを利用することを強く推奨している。核エネルギーを「悪」と決めつける議論もあるが「ガイア」にとっては何の害もない、クリーンでしかも安定したエネルギーであり、再生可能エネルギーや燃料電池など、より安定したエネルギーが実用化できるまでのつなぎの役割としても利用すべきと強く推奨している。
ラブロックの「ガイア学説」の詳細と見解の真意は、今年出版された『ガイアの復讐』に述べられているが、これまでの温暖化を含め「生命体である地球」に対する認識を一変させる衝撃的な内容であり、自らの認識不足、無知を思い知らされた。
地球温暖化がこれまでの人間の行いが招いたものであることは明らかだが、それがこの100年程の、いや46億年の地球の歴史から見ればほんの瞬き程の時間に取り返しのつかない所にまで来てしまったことが残念でならない。
ラブロックのガイア学説によれば、地球は全宇宙の中で唯一、豊かな自然環境と、人類を含む地球上に生息するすべての生物種を育む、「自己調整システム」を持った惑星であり、そのシステムを生命誕生から30億年もの気の遠くなるような時間が経過する間ずっと機能させてきたと言う。
温暖化の主要因といわれる二酸化炭素も、地球を包む大気の中で、太陽からの熱を吸収し、その「温室効果」によってガイアの気温を一定に維持するために機能してきたのだ。
地球の気候は、200万年前から約10万年の周期で「氷期」があると言われている。そして、氷期と氷期との間に約2万年続く「間氷期」あり、現在はその間氷期の中間点にあたると言われている。そして、氷期と間氷期の平均気温の差、つまり、1万年前の氷期と現在の地球全体の平均気温の差は3℃に過ぎないという。この3℃という温度差も急激に起こった変化ではなく、1万年の間に起こった気温の変化ということである。つまり、こうした気温の変化は、ガイアにとっては許容範囲であり自己調整システムが機能する範囲ということになる。それは何回となく繰返されてきた氷期と間氷期の「環境の変化」の中で、人類をはじめ多くの生物種が自然淘汰の洗礼をうけながらも進化し、現在まで生きのびてきていることが証明している。むしろ、氷河期をはじめガイアの気候変化が豊かな生物種を育み、人類や多くの生物種の進化をもたらしたのである。
しかし、今起こっている気温の上昇は全く別のものだ。
世界の平均気温は、一般的な見解として、この100年で0.67℃上昇したといわれているが、実際にはこの30~40年という、余りにも短期間に急激に起こっているものであり、この0.67℃の気温の上昇が大規模な気候変動を起こさせるのに十分な上昇なのである。しかも、地球上に生息する生物種の中で唯一環境を破壊している人間というたった1つの生物種が、余りにも急激に増加している中で起こっている気温の上昇なのだ。しかし、この気温の上昇について、科学者の間では、すでに、大気中に大量の二酸化炭素をはじめ、温室効果ガスが排出されており、「地球温暖化の進行は最早止められない」とする懸念が広がっている。地球温暖化が予想を遥かに超える勢いで加速しているということだ。
農耕を始めた1万年前の人類の数は推計によると500万人、紀元前6000年になると8000万人位に人口が増加したのではないかと推定されている。しかし、現在の世界の人口は65億人をすでに超えており、8000万人といえば世界中で1年間に増加する数と同じだ。我々人間は、気温上昇させる二酸化炭素やフロンといった温室効果ガスを大量に大気中に排出してきただけでなく、いまや65億を超える人間を養うために、二酸化炭素を吸収してくれる森林を破壊し、農地や牧草地に変え、生態系まで壊し始めた。
それだけではない、温暖化による海水温の上昇によって海の森林であるサンゴ礁、そして、大気の組成に重要な役割をはたしているといわれている藻類が急激に減少し、海の生態系も狂いはじめている、さらに、極地の氷が溶け出すことで起こる海水の塩分濃度の変化によって、これまで気温を調整する機能をもつといわれている海流(深層海流)にも重大な影響を及ぼし始めたのだ。
つまり、人間のこれまでの行いと爆発的な人口の増加によって引き起こされた余りにも急激な気温の上昇によって、ガイアが20億年もの間機能してきた「自己調整システム」は、その許容の限界を大きく超えてしまったと言うことだ。
ラブロックは言う。「自己調整する生命体」としてのガイアが、このシステムを撹乱させ、他の生物種まで絶滅の危機に追いやりかねない、大繁殖した人間という一種を、排除、淘汰するために逆襲してきても何の不思議もない。
ガイアは、慈悲も一切の手加減もしない、人間の想像をはるかに超えたやり方で容赦なく攻撃してくるだろう。人間は自らの行いを改める機会があったにもかかわらず、愚かにもガイアに戦線布告してしまったのだと。
温暖化に伴う大規模な気候変動は既に始まっている。21世紀に入ってからのここ数年の間に、世界各地を襲っている自然災害を見れば明らかだ。
●2003年8月ヨーロッパを襲った熱波は、フランスだけで約1万5000人、ヨーロッパ全体で3万人超える命をたった10日間で奪った。
●昨年、アメリカのニューオリンズを襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」は、アメリカの観測史上最大の「カテゴリー5」という猛烈な熱帯低気圧で、7mを超える津波のような高潮を伴って上陸し、ニューオリンズを一瞬のうちに壊滅させ1400人の命を奪ったことは記憶に新しい。
●昨年は、日本にも10個もの台風が上陸し、100人を超える犠牲者と甚大な被害をもたらした。
●気象の異変は世界中で起こっているが、誰も予想していないところでも起きている、2004年、出来るはずのない南米ブラジル沖の南大西洋上で、中心に目を持った大型の低気圧が発生、発達しながらブラジルの都市に上陸、4万棟もの家屋が全半壊、死者も多数でるというブラジルの気象史上初めてのサイクロンによる災害をもたらした。
「ガイア」は人類に対して復讐し始めた。今後人類に降りかかる災難は想像をはるかに超えるものであることは間違いない。ラブロックによれば大規模な気候変動で「今世紀が終わるまでに10億人以上が死ぬだろう」と日経ECOLOGY誌上で予見しているが、その一方自らの著書『ガイアの復讐』では、これから起こる大変動で生き残れる人類は極少数だろうと、さらに悲観的な見方をしている。残念ながらその通りになるのではないだろうか。
今後、温暖化よって引き起こされる人間にとっての災害は超大型の台風やハリケーン、サイクロンといった熱帯低気圧による暴風雨、陸上で発生する竜巻、熱波、異常低温など、気象の異変による災害だけではない、気候の変動は農作物の生産に甚大な被害をもたらし、穀物を飼料にしている酪農にも重大な影響を与えるだろう。魚介類も乱獲によってすでに急激に減少しているが、今後海水温の上昇にともなって海の生態系は大きく崩れ、生物種の個体数は減少の一途を辿ることになるだろう。それにより、今後食糧不足による餓死者は想像を絶する数になることは容易に予測できる。現在の世界人口の3分の1が餓死すると予測する学者もいる。
温暖化による人類の危機はそれだけでは留まらない。気温の上昇に伴って、様々な病原菌が増殖し、猛威を振るい人間の命を脅かすだろう。
2002年の8月台湾の南部、高雄市で熱帯性の感染症デングウイルスによる「デング熱」の感染者が大量に出た。熱帯地方にだけ発生していたデングウイルスが気温上昇にともない「ネッタイシマカ」という蚊を媒体にして北上してきたのだ。ネッタイシマカは20℃以下では生息しないことが分かっている。
これまで台湾の冬の平均気温は20℃以下になっていたのだが、温暖化に伴い
ここ数年気温が上昇傾向にあり、調査の結果、前年の冬の平均気温が20℃を上回ったことが分かった。ネッタイシマカが越冬した結果デング熱が大発生したことが判明したのである。
科学者の間では、今後温暖化に伴いデングウイルスがネッタイシマカを媒体にして大繁殖しながら北上し、香港、中国、そして、日本の沖縄県、九州南部にも「デング熱」感染者を発生させる可能性があると警告している。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)でも今後、「デング熱」に感染する危険地域は25億人から52億人に拡大すると予測している。
現在熱帯地域で発生する「デング熱」及び「デング出血熱」(2度目の感染で発症する)で死亡する人は毎年2万5000人に及ぶ。
こうした温暖化の進行による気候変動に対して、ラブロックだけでなく、IPCCをはじめ多くの科学者が、今世界中で現実に起こっている様々な気象の異変は、今後さらに激しさを増すだけでなく、地球規模で想像もつかない形で人類に襲いかかってくるだろうと警告している。
温暖化のなかでの“寒冷化”もその一つだ。
「ガイア学説」を支持する科学者の一人イギリスのジョン・グリビンは1992年に出版した『地球が熱くなる』の著書の中で、地球大気は、高度によって温度変化のパターンが異なり、それによっていくつかの層に分類される。気象システムが最下層の対流圏(地上より20km)だけで循環しているのは、温度の高い成層圏(20~40km)が大気の対流を閉じ込める蓋のような役目をしているからである。人為的な温室効果は、対流圏の温度を上昇させ、成層圏の温度を下降させるために、この蓋の効果を減少させることになる。対流圏下層部では温室効果ガスが温暖化させているが、その上の成層圏の下層部では逆の寒冷化が進んでいる。これは「人為的な温室効果が作用している証拠」だと指摘している。
数年前に公開された映画「THE DAY AFTER TOMORROW」は、温暖化による今後予測される地球的規模の気候変動の一つのシュミュレーションを映画化したものとして注目を集めた。
気温の上昇によって極地の氷が解け、海水の塩分濃度に変化が起こり、その結果、北極圏周辺で、中心にマイナス100℃という超低温の冷気を伴った3個の巨大な低気圧が発生し、予想を上回る速さで南下、3日間で北半球を凍結させ、やがて地球は「氷河期」に入るという設定であった。こうした極端とも思える気候変動の予測も、急激な気温の上昇によってすでに起こっている成層圏下層部の寒冷化や、極地の氷が解け、海水の塩分濃度が変わることで起こるとされる海流への影響も、科学的に明らかにされていることから、今後、起こりうる大規模な気候変動のひとつと考えてもおかしくはない。
いずれにしても、われわれ人間が、温暖化による地球規模の気候変動を、身をもって実感するのにそれほど時間は掛からないだろう。
こうした温暖化による気候変動の“事実”を目の当りにして国際的な取組みや、世界各国の温暖化対策の現状はどのようになっているのだろうか。
ラブロックは、「京都議定書」で決めたCO2の削減目標(1990年比6%の削減)を途上国も含め、各国が協調し足並みを揃えて削減に取組むなど全く期待できないと悲観的な見方を示している。京都議定書は、そもそも「その成り立ちから考えても極めて政治的な産物」であり「実際に温暖化を防ぐ効果はほとんど期待できない、温暖化問題を国際協調体制によって解決していくことは難しい」「各国はエネルギーや食糧問題に自ら答えをださざるを得なくなるだろう」と指摘する。
11月、ケニアのナイロビで開催された「京都議定書第2回締約国会議」は、ラブロックの指摘どおり何の成果も得られず17日閉幕した。
会議に最大の目的であるCO2の排出削減は「削減」でなく、無残な「増加」という結果に終わったのである。
各国の新な排出量は、議定書から離脱している最大の排出国アメリカの22.8%
を筆頭に、中国16.4%、EU15ケ国13.6%、ロシア6.3%、日本4.9%、インド4.3%、その他31.7%と、世界各国の「温暖化防止」対策は、「既に引き返せない地点を越えている」にも拘わらずほとんど進展していないのが偽らざる現実なのである。
ラブロックが指摘しているように、CO2の削減のために各国が協調するのを待っていても温暖化は最早止めることはできない。いますぐに各国がエネルギーの確保と食糧問題で、自らが今後の方向性を明らかにするとともに、防災対策や非難体制の確保など実効ある対策を立て、速やかに実行に移していくことが緊急の課題になるだろう。すでに、イギリスをはじめ、EUの主要国では、迫り来る温暖化による気候変動に向けて、独自の動きを見せ始めた。また、京都議定書を離脱しているアメリカにおいても、「カトリーナ」の経験から今後さらに巨大化したハリケーンや竜巻、ハリケーンの引き起こす高潮・津波がアメリカ南部襲うことを予測して、防災対策と住民の避難体制の確保等の対策をたて始めた。
こうした動きに対してわが日本はどうだろうか、各自治体はどうだろうか?
危機感は全く伝わってこない。それどころか、国会では教育基本法の改悪の強行や、戦争できる国めざして防衛庁を防衛省にする法案を通過させ、さらに憲法改悪に向けて動き出すなど、反対する野党も含めて地球温暖化など何処吹く風の最悪の状態だ。もともと日本政府は京都議定書を決める際の議長国でありながら、批准を渋りつづけ、批准後も離脱したアメリカ政府とともに削減目標の実施を妨害し続けてきた。日本政府に現時点では温暖化対策について何の期待も持てない。日本人は温暖化防止のために、これまでのような大量のCO2を出し、環境に負荷をかける生活を改め、自らが徹底して省エネなどに努めるとともに、災害対策や非難方法、そして、水や食糧の確保等、自ら答えを出さざるを得ないだろう。基本的には自分や家族の身は自分達で守ることになる。 いま必要なことは、現状を正確に認識し、迫り来る温暖化による「災害」に備えることではないだろうか。備えがなければ被害が大きくなることは、これまでの災害の経験からも明らかである。とは言え、こうすれば「大変動」がきても大丈夫といえるような確かな対策や備えのマニュアルがあるわけではない。
今住んでいる「場所」によっても当然対策も備えも変わってくる。「経験」を積みながらより強固な備えにしてくしかい。言うまでもないが備えとは、危機意識と危機管理能力をしっかり身につけることだ。生半可なことでは通用しない。
1. まず、温暖化と今後予測される気候変動等についての正確な情報を知ること。そのためには、環境保護団体など信頼できる情報源から最新の情報を得ること。「情報のネットワーク」を作ることは必要不可欠である。
勿論TVや新聞等のマスコミからの情報にも注意は必要だが、あまりあてにしない方が無難。事が起こってからの情報では遅いし役に立たない。
2. 基本的なことであるが、現在居住している建物の状況、地域の地理的な位置や特徴、それを知るための調査、点検も必要だ。また、日本列島は小さいようでも南の沖縄(北緯25度)から北の北海道(北緯45度)までかなりの緯度差がある。緯度的な位置の確認もしておく必要があるだろう。温暖化による気温の上昇は緯度が高くなるほど大きい。
3. 今後、最も厳重に備えが必要な災害は、台風である。日本にやって来る台風は、赤道付近の熱帯の海上で発生した熱帯性低気圧が発達して、太平洋高気圧を回って日本にやってくる。海水温の上昇によって上昇気流が大きくなり当然大型化してくる。しかも、今後は赤道付近だけでなく赤道より緯度が高い温帯の太平洋上でも海水温の上昇に伴って発生するとみられている。昨年高緯度で超大型の台風が発生している。今後、大型化する暴風雨に対する十分な備えが絶対必要になる。風速60mを超える暴風が吹けば、雨戸のない窓ガラスは割れ、瓦屋根の瓦が吹き飛びその重石がなくなれば屋根は吹き飛ぶ。雨戸のない家屋や、マンション等の窓ガラスは、風圧や飛んで来た瓦などで壊れる危険性が高くなる。全ての窓に雨戸は絶対に必要になる。
4. 暴風とともに雨の降り方にも十分に備える。今後1時間に50mmを超える豪雨や、降り始めからの雨量が500mmを超えるような猛烈な雨に対しては、速く高い安全な場所に避難すること。豪雨の予報があるのに出勤することはやめるべきだ。出勤に命を掛けるべきではない。
5. 長く続く夏の暑さ及び、紫外線に対する備えと対策に万全を期す必要がある。熱中症から命を守るためには、とくに免疫力が低下している幼児や高齢者は、気温が35℃を超える日中には絶対屋外には出ないこと。冷房の効いた屋内にいること。水分を十分に補給すること。万一屋外に出る時は、周囲に日除けの付いた帽子、サングラス、ミネラルウォーターを必ず持って出かけること。工事現場などで働く作業員にとっては今後死活問題になってくるのではないだろうか。
EU諸国では、熱波情報と紫外線情報を頻繁に流している。当然のことだが必要な時は「警報」を出して危険を知らせる。残念ながら日本にはそんな体制はない。自分の身は自分で守ることだ。
6. 温暖化が進めば農作物の収穫に影響が出てくることは避けられない。また、豪雨や旱魃の深刻な災害に見舞われた輸入国から食糧が入ってこなくなるという事態も今後必ず起こる。穀物の自給率40%を大きく下回る日本はいずれ深刻な食糧危機に陥ることは間違いない。輸入食糧がストップし、国内の農作物が災害で打撃を受けるというような事態にでもなれば、考えただけでも恐ろしい。温暖化による人類への最大の恐怖は食糧危機だとも言われている。かつて栄えた文明も、人口の増加と争いを繰返した後、最後は食糧が尽き滅亡したと伝えられる。食糧を蓄えるのは大変難しいことだが、普段から保存食を出来るだけ多く備蓄しておくことは必要だ。出来れば可能なかぎり食糧の自給を考えるべきではないだろうか。幸いこの地域はその気になればやれる条件はある。場合によっては「食糧自給ネットワーク」を作る必要があるだろう。何れにしても、今後、地球的規模で豪雨、旱魃、水不足、乾燥化などの災害が頻発すれば、世界中で食糧不足が起こることは必至である。
7. いずれ気温の上昇にともなって、「デング熱」マラリアなど熱帯性の感染症に脅かされることが予測される。住民だけで防御対策をたてるのは難しい、行政機関の対策は絶対に必要だが、どういう経路で何を媒体にして感染するのか、感染するとどういう症状が出て、どういう治療が必要になるのか、ワクチンはあるのか、などその感染症についての正確な知識と情報を持っておくことが備えになる。事実を知った上で、自分達で出来る防御対策をたてること。こんなことまで考えだすと気が遠くなってきそうだが、子や孫、自らを守るためには覚悟をきめるしかないのである。
今後、さらに予測不能な事態が起こり得ると思うが、私たち人間自らが招いてしまった結果である以上受け入れるしかない。その上でとくに、これからの10年をどのように生きるのか、今私たち人間に問われているのではないだろうか。
まだ、何とかなるのではないか、誰かが、国が、立派な科学者が何か方策を見つけて温暖化を食い止めてくれるのではないか、いまからでも有効な手を打てば十分間に合うのではないか、環境庁あたりも100年先の話をしているし、そんなに大騒ぎするほどのことはないのではないか、などの淡い期待や楽観はキッパリ捨てることだ。生きる希望や楽しみまで捨てる必要はないが、常に最悪の事態を考えておくに越したことはないのである。
しかし、考えようによっては、知らないまま、或は余計なことは考えずに、「その時」を迎えるのもこれからの生き方の一つかもしれない。
2006年12月18日
福井 陽児
参考文献
ジェームズ・ラブロック著 『ガイアの復讐』中央公論新社
『ガイアの時代』工作舎
ジョン・グリビン著 『人為的温室効果の脅威・
地球が熱くなる』地人書館
著者の紹介
ジェームズ・ラブロック
James Lovelock
1919年英国生まれ。
生物物理学博士、医学博士、英国国立医学研究所、
米国ハーバード大学医学部、英国オックスフォード大学医学部など
で研究員および教授を歴任。
1957年、電子捕獲検出器の開発に成功。
この装置によって、フロンやその他地球環境に影響を及ぼす微量成 分に関する分析が急速に進展。
1960年、NASAの火星生物探査計画に招聘され、その過程で地球大気の特殊性を認識し、「生物圏が地球気候と大気組成を、生物が生きていくうえで最適な状態に調整・維持している」という「ガイア仮説」を提唱する。
2006年1月、英インディペンデント紙に「温暖化は既に引き返せる地点を越えてしまった。今世紀が終わるまでに10億人以上が死ぬだろう」との衝撃的な論文を発表。悲観的な見方が波紋を広げている。
ジョン・グリビン
John Gribbin
1946年生まれ。
ケンブリッジ大学で学位(天体物理学)を取得したのち「ネイチャー」誌の編集に携わっている。
1957年からは、サセックス大学の科学政策研究班「未来」チームに加わり、気候変動が世界の食糧供給に与える影響について研究している。
1978年からはイギリスの週刊科学誌「ニュー・サイエンティスト」のコンサルタントとして、ほとんど毎週のように解説記事を執筆している。現在も、最も活動的なサイエンス ライターの一人である。
これからの10年どう生きるのか
21世紀に入り早6年が終わろうとしている。21世紀は「環境の世紀」と言われて久しい。環境とは、勿論かけがえのない地球環境のことだ。人類を含むこの地球上に生息するすべての生物種にとっての地球環境であることは云うまでもない。「環境の世紀」と言うからにはそれなりの根拠がある。加速する地球温暖化に対して今すぐに手を打たなければ、人類にとって取り返しのつかない事態を招くことになるという事実があるからに他ならない。
2006年6月18日イギリスのシンクタンク・オックスフォードリサーチ・グループが、21世紀、人類の直面する「真の脅威」は地球温暖化であるとの報告書を発表した。ブッシュ政権の「テロとの戦い」は「真の脅威から目を逸らさせることにある」ことも付け加えた。
地球温暖化の脅威は今まさに目前に迫っているという見解である。このままだと100年後には地球環境は大変なことになっているというような100年先の話をしているのではない。
そして、2006年12月、月刊日経『エコロジー』誌上で、イギリスの科学者であり、「ガイア学説」の提唱者である、ジェームズ・ラブロックが「地球温暖化は既に引き返せる地点を越えてしまった」との悲観的見解を示した。
こうした見解は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)や多くの科学者の間でも共通の認識になりつつある。
同時にラブロックは、「今後、どんなエネルギー源を選択していくべきか、という問いに1つの答えはない」としながらも、化石燃料に代わるエネルギーについて、原子力エネルギーを利用することを強く推奨している。核エネルギーを「悪」と決めつける議論もあるが「ガイア」にとっては何の害もない、クリーンでしかも安定したエネルギーであり、再生可能エネルギーや燃料電池など、より安定したエネルギーが実用化できるまでのつなぎの役割としても利用すべきと強く推奨している。
ラブロックの「ガイア学説」の詳細と見解の真意は、今年出版された『ガイアの復讐』に述べられているが、これまでの温暖化を含め「生命体である地球」に対する認識を一変させる衝撃的な内容であり、自らの認識不足、無知を思い知らされた。
地球温暖化がこれまでの人間の行いが招いたものであることは明らかだが、それがこの100年程の、いや46億年の地球の歴史から見ればほんの瞬き程の時間に取り返しのつかない所にまで来てしまったことが残念でならない。
ラブロックのガイア学説によれば、地球は全宇宙の中で唯一、豊かな自然環境と、人類を含む地球上に生息するすべての生物種を育む、「自己調整システム」を持った惑星であり、そのシステムを生命誕生から30億年もの気の遠くなるような時間が経過する間ずっと機能させてきたと言う。
温暖化の主要因といわれる二酸化炭素も、地球を包む大気の中で、太陽からの熱を吸収し、その「温室効果」によってガイアの気温を一定に維持するために機能してきたのだ。
地球の気候は、200万年前から約10万年の周期で「氷期」があると言われている。そして、氷期と氷期との間に約2万年続く「間氷期」あり、現在はその間氷期の中間点にあたると言われている。そして、氷期と間氷期の平均気温の差、つまり、1万年前の氷期と現在の地球全体の平均気温の差は3℃に過ぎないという。この3℃という温度差も急激に起こった変化ではなく、1万年の間に起こった気温の変化ということである。つまり、こうした気温の変化は、ガイアにとっては許容範囲であり自己調整システムが機能する範囲ということになる。それは何回となく繰返されてきた氷期と間氷期の「環境の変化」の中で、人類をはじめ多くの生物種が自然淘汰の洗礼をうけながらも進化し、現在まで生きのびてきていることが証明している。むしろ、氷河期をはじめガイアの気候変化が豊かな生物種を育み、人類や多くの生物種の進化をもたらしたのである。
しかし、今起こっている気温の上昇は全く別のものだ。
世界の平均気温は、一般的な見解として、この100年で0.67℃上昇したといわれているが、実際にはこの30~40年という、余りにも短期間に急激に起こっているものであり、この0.67℃の気温の上昇が大規模な気候変動を起こさせるのに十分な上昇なのである。しかも、地球上に生息する生物種の中で唯一環境を破壊している人間というたった1つの生物種が、余りにも急激に増加している中で起こっている気温の上昇なのだ。しかし、この気温の上昇について、科学者の間では、すでに、大気中に大量の二酸化炭素をはじめ、温室効果ガスが排出されており、「地球温暖化の進行は最早止められない」とする懸念が広がっている。地球温暖化が予想を遥かに超える勢いで加速しているということだ。
農耕を始めた1万年前の人類の数は推計によると500万人、紀元前6000年になると8000万人位に人口が増加したのではないかと推定されている。しかし、現在の世界の人口は65億人をすでに超えており、8000万人といえば世界中で1年間に増加する数と同じだ。我々人間は、気温上昇させる二酸化炭素やフロンといった温室効果ガスを大量に大気中に排出してきただけでなく、いまや65億を超える人間を養うために、二酸化炭素を吸収してくれる森林を破壊し、農地や牧草地に変え、生態系まで壊し始めた。
それだけではない、温暖化による海水温の上昇によって海の森林であるサンゴ礁、そして、大気の組成に重要な役割をはたしているといわれている藻類が急激に減少し、海の生態系も狂いはじめている、さらに、極地の氷が溶け出すことで起こる海水の塩分濃度の変化によって、これまで気温を調整する機能をもつといわれている海流(深層海流)にも重大な影響を及ぼし始めたのだ。
つまり、人間のこれまでの行いと爆発的な人口の増加によって引き起こされた余りにも急激な気温の上昇によって、ガイアが20億年もの間機能してきた「自己調整システム」は、その許容の限界を大きく超えてしまったと言うことだ。
ラブロックは言う。「自己調整する生命体」としてのガイアが、このシステムを撹乱させ、他の生物種まで絶滅の危機に追いやりかねない、大繁殖した人間という一種を、排除、淘汰するために逆襲してきても何の不思議もない。
ガイアは、慈悲も一切の手加減もしない、人間の想像をはるかに超えたやり方で容赦なく攻撃してくるだろう。人間は自らの行いを改める機会があったにもかかわらず、愚かにもガイアに戦線布告してしまったのだと。
温暖化に伴う大規模な気候変動は既に始まっている。21世紀に入ってからのここ数年の間に、世界各地を襲っている自然災害を見れば明らかだ。
●2003年8月ヨーロッパを襲った熱波は、フランスだけで約1万5000人、ヨーロッパ全体で3万人超える命をたった10日間で奪った。
●昨年、アメリカのニューオリンズを襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」は、アメリカの観測史上最大の「カテゴリー5」という猛烈な熱帯低気圧で、7mを超える津波のような高潮を伴って上陸し、ニューオリンズを一瞬のうちに壊滅させ1400人の命を奪ったことは記憶に新しい。
●昨年は、日本にも10個もの台風が上陸し、100人を超える犠牲者と甚大な被害をもたらした。
●気象の異変は世界中で起こっているが、誰も予想していないところでも起きている、2004年、出来るはずのない南米ブラジル沖の南大西洋上で、中心に目を持った大型の低気圧が発生、発達しながらブラジルの都市に上陸、4万棟もの家屋が全半壊、死者も多数でるというブラジルの気象史上初めてのサイクロンによる災害をもたらした。
「ガイア」は人類に対して復讐し始めた。今後人類に降りかかる災難は想像をはるかに超えるものであることは間違いない。ラブロックによれば大規模な気候変動で「今世紀が終わるまでに10億人以上が死ぬだろう」と日経ECOLOGY誌上で予見しているが、その一方自らの著書『ガイアの復讐』では、これから起こる大変動で生き残れる人類は極少数だろうと、さらに悲観的な見方をしている。残念ながらその通りになるのではないだろうか。
今後、温暖化よって引き起こされる人間にとっての災害は超大型の台風やハリケーン、サイクロンといった熱帯低気圧による暴風雨、陸上で発生する竜巻、熱波、異常低温など、気象の異変による災害だけではない、気候の変動は農作物の生産に甚大な被害をもたらし、穀物を飼料にしている酪農にも重大な影響を与えるだろう。魚介類も乱獲によってすでに急激に減少しているが、今後海水温の上昇にともなって海の生態系は大きく崩れ、生物種の個体数は減少の一途を辿ることになるだろう。それにより、今後食糧不足による餓死者は想像を絶する数になることは容易に予測できる。現在の世界人口の3分の1が餓死すると予測する学者もいる。
温暖化による人類の危機はそれだけでは留まらない。気温の上昇に伴って、様々な病原菌が増殖し、猛威を振るい人間の命を脅かすだろう。
2002年の8月台湾の南部、高雄市で熱帯性の感染症デングウイルスによる「デング熱」の感染者が大量に出た。熱帯地方にだけ発生していたデングウイルスが気温上昇にともない「ネッタイシマカ」という蚊を媒体にして北上してきたのだ。ネッタイシマカは20℃以下では生息しないことが分かっている。
これまで台湾の冬の平均気温は20℃以下になっていたのだが、温暖化に伴い
ここ数年気温が上昇傾向にあり、調査の結果、前年の冬の平均気温が20℃を上回ったことが分かった。ネッタイシマカが越冬した結果デング熱が大発生したことが判明したのである。
科学者の間では、今後温暖化に伴いデングウイルスがネッタイシマカを媒体にして大繁殖しながら北上し、香港、中国、そして、日本の沖縄県、九州南部にも「デング熱」感染者を発生させる可能性があると警告している。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)でも今後、「デング熱」に感染する危険地域は25億人から52億人に拡大すると予測している。
現在熱帯地域で発生する「デング熱」及び「デング出血熱」(2度目の感染で発症する)で死亡する人は毎年2万5000人に及ぶ。
こうした温暖化の進行による気候変動に対して、ラブロックだけでなく、IPCCをはじめ多くの科学者が、今世界中で現実に起こっている様々な気象の異変は、今後さらに激しさを増すだけでなく、地球規模で想像もつかない形で人類に襲いかかってくるだろうと警告している。
温暖化のなかでの“寒冷化”もその一つだ。
「ガイア学説」を支持する科学者の一人イギリスのジョン・グリビンは1992年に出版した『地球が熱くなる』の著書の中で、地球大気は、高度によって温度変化のパターンが異なり、それによっていくつかの層に分類される。気象システムが最下層の対流圏(地上より20km)だけで循環しているのは、温度の高い成層圏(20~40km)が大気の対流を閉じ込める蓋のような役目をしているからである。人為的な温室効果は、対流圏の温度を上昇させ、成層圏の温度を下降させるために、この蓋の効果を減少させることになる。対流圏下層部では温室効果ガスが温暖化させているが、その上の成層圏の下層部では逆の寒冷化が進んでいる。これは「人為的な温室効果が作用している証拠」だと指摘している。
数年前に公開された映画「THE DAY AFTER TOMORROW」は、温暖化による今後予測される地球的規模の気候変動の一つのシュミュレーションを映画化したものとして注目を集めた。
気温の上昇によって極地の氷が解け、海水の塩分濃度に変化が起こり、その結果、北極圏周辺で、中心にマイナス100℃という超低温の冷気を伴った3個の巨大な低気圧が発生し、予想を上回る速さで南下、3日間で北半球を凍結させ、やがて地球は「氷河期」に入るという設定であった。こうした極端とも思える気候変動の予測も、急激な気温の上昇によってすでに起こっている成層圏下層部の寒冷化や、極地の氷が解け、海水の塩分濃度が変わることで起こるとされる海流への影響も、科学的に明らかにされていることから、今後、起こりうる大規模な気候変動のひとつと考えてもおかしくはない。
いずれにしても、われわれ人間が、温暖化による地球規模の気候変動を、身をもって実感するのにそれほど時間は掛からないだろう。
こうした温暖化による気候変動の“事実”を目の当りにして国際的な取組みや、世界各国の温暖化対策の現状はどのようになっているのだろうか。
ラブロックは、「京都議定書」で決めたCO2の削減目標(1990年比6%の削減)を途上国も含め、各国が協調し足並みを揃えて削減に取組むなど全く期待できないと悲観的な見方を示している。京都議定書は、そもそも「その成り立ちから考えても極めて政治的な産物」であり「実際に温暖化を防ぐ効果はほとんど期待できない、温暖化問題を国際協調体制によって解決していくことは難しい」「各国はエネルギーや食糧問題に自ら答えをださざるを得なくなるだろう」と指摘する。
11月、ケニアのナイロビで開催された「京都議定書第2回締約国会議」は、ラブロックの指摘どおり何の成果も得られず17日閉幕した。
会議に最大の目的であるCO2の排出削減は「削減」でなく、無残な「増加」という結果に終わったのである。
各国の新な排出量は、議定書から離脱している最大の排出国アメリカの22.8%
を筆頭に、中国16.4%、EU15ケ国13.6%、ロシア6.3%、日本4.9%、インド4.3%、その他31.7%と、世界各国の「温暖化防止」対策は、「既に引き返せない地点を越えている」にも拘わらずほとんど進展していないのが偽らざる現実なのである。
ラブロックが指摘しているように、CO2の削減のために各国が協調するのを待っていても温暖化は最早止めることはできない。いますぐに各国がエネルギーの確保と食糧問題で、自らが今後の方向性を明らかにするとともに、防災対策や非難体制の確保など実効ある対策を立て、速やかに実行に移していくことが緊急の課題になるだろう。すでに、イギリスをはじめ、EUの主要国では、迫り来る温暖化による気候変動に向けて、独自の動きを見せ始めた。また、京都議定書を離脱しているアメリカにおいても、「カトリーナ」の経験から今後さらに巨大化したハリケーンや竜巻、ハリケーンの引き起こす高潮・津波がアメリカ南部襲うことを予測して、防災対策と住民の避難体制の確保等の対策をたて始めた。
こうした動きに対してわが日本はどうだろうか、各自治体はどうだろうか?
危機感は全く伝わってこない。それどころか、国会では教育基本法の改悪の強行や、戦争できる国めざして防衛庁を防衛省にする法案を通過させ、さらに憲法改悪に向けて動き出すなど、反対する野党も含めて地球温暖化など何処吹く風の最悪の状態だ。もともと日本政府は京都議定書を決める際の議長国でありながら、批准を渋りつづけ、批准後も離脱したアメリカ政府とともに削減目標の実施を妨害し続けてきた。日本政府に現時点では温暖化対策について何の期待も持てない。日本人は温暖化防止のために、これまでのような大量のCO2を出し、環境に負荷をかける生活を改め、自らが徹底して省エネなどに努めるとともに、災害対策や非難方法、そして、水や食糧の確保等、自ら答えを出さざるを得ないだろう。基本的には自分や家族の身は自分達で守ることになる。 いま必要なことは、現状を正確に認識し、迫り来る温暖化による「災害」に備えることではないだろうか。備えがなければ被害が大きくなることは、これまでの災害の経験からも明らかである。とは言え、こうすれば「大変動」がきても大丈夫といえるような確かな対策や備えのマニュアルがあるわけではない。
今住んでいる「場所」によっても当然対策も備えも変わってくる。「経験」を積みながらより強固な備えにしてくしかい。言うまでもないが備えとは、危機意識と危機管理能力をしっかり身につけることだ。生半可なことでは通用しない。
1. まず、温暖化と今後予測される気候変動等についての正確な情報を知ること。そのためには、環境保護団体など信頼できる情報源から最新の情報を得ること。「情報のネットワーク」を作ることは必要不可欠である。
勿論TVや新聞等のマスコミからの情報にも注意は必要だが、あまりあてにしない方が無難。事が起こってからの情報では遅いし役に立たない。
2. 基本的なことであるが、現在居住している建物の状況、地域の地理的な位置や特徴、それを知るための調査、点検も必要だ。また、日本列島は小さいようでも南の沖縄(北緯25度)から北の北海道(北緯45度)までかなりの緯度差がある。緯度的な位置の確認もしておく必要があるだろう。温暖化による気温の上昇は緯度が高くなるほど大きい。
3. 今後、最も厳重に備えが必要な災害は、台風である。日本にやって来る台風は、赤道付近の熱帯の海上で発生した熱帯性低気圧が発達して、太平洋高気圧を回って日本にやってくる。海水温の上昇によって上昇気流が大きくなり当然大型化してくる。しかも、今後は赤道付近だけでなく赤道より緯度が高い温帯の太平洋上でも海水温の上昇に伴って発生するとみられている。昨年高緯度で超大型の台風が発生している。今後、大型化する暴風雨に対する十分な備えが絶対必要になる。風速60mを超える暴風が吹けば、雨戸のない窓ガラスは割れ、瓦屋根の瓦が吹き飛びその重石がなくなれば屋根は吹き飛ぶ。雨戸のない家屋や、マンション等の窓ガラスは、風圧や飛んで来た瓦などで壊れる危険性が高くなる。全ての窓に雨戸は絶対に必要になる。
4. 暴風とともに雨の降り方にも十分に備える。今後1時間に50mmを超える豪雨や、降り始めからの雨量が500mmを超えるような猛烈な雨に対しては、速く高い安全な場所に避難すること。豪雨の予報があるのに出勤することはやめるべきだ。出勤に命を掛けるべきではない。
5. 長く続く夏の暑さ及び、紫外線に対する備えと対策に万全を期す必要がある。熱中症から命を守るためには、とくに免疫力が低下している幼児や高齢者は、気温が35℃を超える日中には絶対屋外には出ないこと。冷房の効いた屋内にいること。水分を十分に補給すること。万一屋外に出る時は、周囲に日除けの付いた帽子、サングラス、ミネラルウォーターを必ず持って出かけること。工事現場などで働く作業員にとっては今後死活問題になってくるのではないだろうか。
EU諸国では、熱波情報と紫外線情報を頻繁に流している。当然のことだが必要な時は「警報」を出して危険を知らせる。残念ながら日本にはそんな体制はない。自分の身は自分で守ることだ。
6. 温暖化が進めば農作物の収穫に影響が出てくることは避けられない。また、豪雨や旱魃の深刻な災害に見舞われた輸入国から食糧が入ってこなくなるという事態も今後必ず起こる。穀物の自給率40%を大きく下回る日本はいずれ深刻な食糧危機に陥ることは間違いない。輸入食糧がストップし、国内の農作物が災害で打撃を受けるというような事態にでもなれば、考えただけでも恐ろしい。温暖化による人類への最大の恐怖は食糧危機だとも言われている。かつて栄えた文明も、人口の増加と争いを繰返した後、最後は食糧が尽き滅亡したと伝えられる。食糧を蓄えるのは大変難しいことだが、普段から保存食を出来るだけ多く備蓄しておくことは必要だ。出来れば可能なかぎり食糧の自給を考えるべきではないだろうか。幸いこの地域はその気になればやれる条件はある。場合によっては「食糧自給ネットワーク」を作る必要があるだろう。何れにしても、今後、地球的規模で豪雨、旱魃、水不足、乾燥化などの災害が頻発すれば、世界中で食糧不足が起こることは必至である。
7. いずれ気温の上昇にともなって、「デング熱」マラリアなど熱帯性の感染症に脅かされることが予測される。住民だけで防御対策をたてるのは難しい、行政機関の対策は絶対に必要だが、どういう経路で何を媒体にして感染するのか、感染するとどういう症状が出て、どういう治療が必要になるのか、ワクチンはあるのか、などその感染症についての正確な知識と情報を持っておくことが備えになる。事実を知った上で、自分達で出来る防御対策をたてること。こんなことまで考えだすと気が遠くなってきそうだが、子や孫、自らを守るためには覚悟をきめるしかないのである。
今後、さらに予測不能な事態が起こり得ると思うが、私たち人間自らが招いてしまった結果である以上受け入れるしかない。その上でとくに、これからの10年をどのように生きるのか、今私たち人間に問われているのではないだろうか。
まだ、何とかなるのではないか、誰かが、国が、立派な科学者が何か方策を見つけて温暖化を食い止めてくれるのではないか、いまからでも有効な手を打てば十分間に合うのではないか、環境庁あたりも100年先の話をしているし、そんなに大騒ぎするほどのことはないのではないか、などの淡い期待や楽観はキッパリ捨てることだ。生きる希望や楽しみまで捨てる必要はないが、常に最悪の事態を考えておくに越したことはないのである。
しかし、考えようによっては、知らないまま、或は余計なことは考えずに、「その時」を迎えるのもこれからの生き方の一つかもしれない。
2006年12月18日
福井 陽児
参考文献
ジェームズ・ラブロック著 『ガイアの復讐』中央公論新社
『ガイアの時代』工作舎
ジョン・グリビン著 『人為的温室効果の脅威・
地球が熱くなる』地人書館
著者の紹介
ジェームズ・ラブロック
James Lovelock
1919年英国生まれ。
生物物理学博士、医学博士、英国国立医学研究所、
米国ハーバード大学医学部、英国オックスフォード大学医学部など
で研究員および教授を歴任。
1957年、電子捕獲検出器の開発に成功。
この装置によって、フロンやその他地球環境に影響を及ぼす微量成 分に関する分析が急速に進展。
1960年、NASAの火星生物探査計画に招聘され、その過程で地球大気の特殊性を認識し、「生物圏が地球気候と大気組成を、生物が生きていくうえで最適な状態に調整・維持している」という「ガイア仮説」を提唱する。
2006年1月、英インディペンデント紙に「温暖化は既に引き返せる地点を越えてしまった。今世紀が終わるまでに10億人以上が死ぬだろう」との衝撃的な論文を発表。悲観的な見方が波紋を広げている。
ジョン・グリビン
John Gribbin
1946年生まれ。
ケンブリッジ大学で学位(天体物理学)を取得したのち「ネイチャー」誌の編集に携わっている。
1957年からは、サセックス大学の科学政策研究班「未来」チームに加わり、気候変動が世界の食糧供給に与える影響について研究している。
1978年からはイギリスの週刊科学誌「ニュー・サイエンティスト」のコンサルタントとして、ほとんど毎週のように解説記事を執筆している。現在も、最も活動的なサイエンス ライターの一人である。