COP10・「名古屋議定書」採択に拍手!
生物多様性第10回締約国会議で、「生態系保全目標」や「遺伝資源の利益配分」で国際ルール「名古屋議定書」が採択されたことを心から喜ぶとともに、日本が議長国として、その役割を果たしたことに心から拍手を送りたい。
29日の夜まで、折衷案を含むぎりぎりの交渉の結果、① 自然の損失速度を少なくとも半減させる、② 魚の乱獲を避ける、③ 侵略的外来種を根絶するなど、20項目に亘り合意した。18年に及ぶ生物多様性条約の歴史上、画期的な成果だといえる。各国代表には、昨年末の「気候変動枠組み条約第15回会議・COP15」で合意に至らなかった「コペンハーゲンの失敗を繰り返すな」との思いがあり、足踏みも、いかなる後退も許されないと言う、並々ならぬ決意が、合意に向けて大きく舵を切らせたのではないかと思う。
しかし、国際的な、国レベルの「目標」や「ルール」ができただけで、その一歩を踏み出すのはこれからであり、合意された「目標」や「ルール」が実行されるかどうかはこれからの具体的行動にかかっている。そして、生物多様性や生態系を守る責任は、国や地方自治体だけでなく、企業、そして、個人に至るまで、この地球環境・自然の中で暮らす、すべての人間と社会にある。
地球環境や自然と無関係に存在している人間などいないし、自然からの無償の「生態系サービス」の恩恵を受けていない人間などいない。
かけがえのない地球の自然は、陸や海、湖沼に生息する何百万種の生きものや、何千万種の微生物などによって作られ、支えられている。人間は、こうした生物多様性が作り出している豊かな自然環境の中で“生かされている”という自覚をもち、生物多様性を失わせ、生態系を撹乱するすべての行為を止め、その保全のためのあらゆる手立てを講じること、そして、豊かな自然を次世代に受け継いでいくためにただちに行動を起こす時期にきていると思う。
今後「名古屋議定書」が、国や地方自治体、企業や個人の買い物に至るまで、何かを決めるとき、行動する際、「地球温暖化にとってどうか」「生物多様性にとってどうか」が、判断あるいは行動の基準になることを心から願いたい。
29日の夜まで、折衷案を含むぎりぎりの交渉の結果、① 自然の損失速度を少なくとも半減させる、② 魚の乱獲を避ける、③ 侵略的外来種を根絶するなど、20項目に亘り合意した。18年に及ぶ生物多様性条約の歴史上、画期的な成果だといえる。各国代表には、昨年末の「気候変動枠組み条約第15回会議・COP15」で合意に至らなかった「コペンハーゲンの失敗を繰り返すな」との思いがあり、足踏みも、いかなる後退も許されないと言う、並々ならぬ決意が、合意に向けて大きく舵を切らせたのではないかと思う。
しかし、国際的な、国レベルの「目標」や「ルール」ができただけで、その一歩を踏み出すのはこれからであり、合意された「目標」や「ルール」が実行されるかどうかはこれからの具体的行動にかかっている。そして、生物多様性や生態系を守る責任は、国や地方自治体だけでなく、企業、そして、個人に至るまで、この地球環境・自然の中で暮らす、すべての人間と社会にある。
地球環境や自然と無関係に存在している人間などいないし、自然からの無償の「生態系サービス」の恩恵を受けていない人間などいない。
かけがえのない地球の自然は、陸や海、湖沼に生息する何百万種の生きものや、何千万種の微生物などによって作られ、支えられている。人間は、こうした生物多様性が作り出している豊かな自然環境の中で“生かされている”という自覚をもち、生物多様性を失わせ、生態系を撹乱するすべての行為を止め、その保全のためのあらゆる手立てを講じること、そして、豊かな自然を次世代に受け継いでいくためにただちに行動を起こす時期にきていると思う。
今後「名古屋議定書」が、国や地方自治体、企業や個人の買い物に至るまで、何かを決めるとき、行動する際、「地球温暖化にとってどうか」「生物多様性にとってどうか」が、判断あるいは行動の基準になることを心から願いたい。
「国連地球生きもの会議・COP10」に思う
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が昨日18日名古屋国際会議場で始まった。
COP10とは、「CBD・COP10」という。CBDは「生物多様性条約・ Convention on Biological Diversity 」で、COPは「締約国会議・Conference of the Parties」の略である。
第10回ということだが、その始まりは18年前の1992年にブラジル、リオ・デ・ジャネイロで開催された「国連環境開発会議」で、地球温暖化など地球環境問題を人類共通の課題として、各国が集まり議論された。この会議で、「気候変動枠組条約」とともに「生物多様性条約」が採択された。「双子の条約」とも言われ、地球温暖化による気候変動と生物多様性は切っても切れない関係ということだ。
この「会議」には、「生物多様性条約」を批准(同意)した190以上の国と地域から、8000人以上の各国政府関係者や国連関係者、NGO(非政府組織)のメンバーが参加するという。まさに、「気候変動枠組条約」と同等の会議ということになる。
この「条約」は、① 生物多様性の保全、② 生物資源の持続可能な利用、③ 遺伝資源の利用から生じる利益の公平かつ衡平(こうへい・各国にたいしてバランスよく)な分配、を目的としている。1960年代以降、人口の増加とともに人間の活動によって世界各地で環境破壊が進み、多くの生物が絶滅の危機にさらされたり、実際に絶滅したりしてきた。そこで、それをくい止め、生物多様性を守る国際ルールを作ろうというのが生物多様性条約であり、今回の会議の最大の目的である。
しかし、生物多様性と生態系保全のための資金と、遺伝資源の利用から生じる利益の分配をめぐり、早くも、遺伝資源の原産国である途上国とそれを利用し利益をえている先進国との間で対立、折り合いがつき「議定書」(合意)までこぎ着けるかどうか微妙だ。「気候変動枠組条約締約国会議・COP15」においてもそうであったが、やはり、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの削減数値目標で、「先進国」と中国など「途上国」との間で折り合いがつかなかったが、今回の「生物多様性条約締約国会議」においても実効性のある「議定書」という合意が得られないようなことになれば、事態はきわめて深刻と言わなければならないと思う。
地球温暖化に伴う気候変動と同様に生物多様性の急速な減少は、最早、一刻の猶予もないのである。足踏みしている時間はないし、ましてや、「生態系サービス」についての「利益配分」について議論している余地などないのである。
そもそも、自然から無償で提供されている遺伝資源を含むすべての「生態系サービス」は、人間だけのものではないのだ。むしろ、「生物多様性ついて考える」(9/4投稿記事を参照)でも書いたが、生物多様性と生態系においては、何千万の生物種の中のただの一種に過ぎないだけでなく、何の役割も果たしていない人間の存在意義などほとんどなく、「生態系サービス」の恩恵を奪い合うなどとんでもない話なのである。むしろ人間は、生物多様性を失わせ、絶滅の危機を招いた責任を全面的に負うとともに、無条件に直ちに、その保全と修復のために行動を起こすべき時であると言わなければならない。
「大絶滅の危機」が差し迫っているのに、もはや先進国も途上国もない、将来の世代のためにも後退や足踏みは許されない。日本は議長国として、また、先進国の一員としての責任を果たし、何としても「合意」のために全力を注ぐべきと心から思う。
COP10とは、「CBD・COP10」という。CBDは「生物多様性条約・ Convention on Biological Diversity 」で、COPは「締約国会議・Conference of the Parties」の略である。
第10回ということだが、その始まりは18年前の1992年にブラジル、リオ・デ・ジャネイロで開催された「国連環境開発会議」で、地球温暖化など地球環境問題を人類共通の課題として、各国が集まり議論された。この会議で、「気候変動枠組条約」とともに「生物多様性条約」が採択された。「双子の条約」とも言われ、地球温暖化による気候変動と生物多様性は切っても切れない関係ということだ。
この「会議」には、「生物多様性条約」を批准(同意)した190以上の国と地域から、8000人以上の各国政府関係者や国連関係者、NGO(非政府組織)のメンバーが参加するという。まさに、「気候変動枠組条約」と同等の会議ということになる。
この「条約」は、① 生物多様性の保全、② 生物資源の持続可能な利用、③ 遺伝資源の利用から生じる利益の公平かつ衡平(こうへい・各国にたいしてバランスよく)な分配、を目的としている。1960年代以降、人口の増加とともに人間の活動によって世界各地で環境破壊が進み、多くの生物が絶滅の危機にさらされたり、実際に絶滅したりしてきた。そこで、それをくい止め、生物多様性を守る国際ルールを作ろうというのが生物多様性条約であり、今回の会議の最大の目的である。
しかし、生物多様性と生態系保全のための資金と、遺伝資源の利用から生じる利益の分配をめぐり、早くも、遺伝資源の原産国である途上国とそれを利用し利益をえている先進国との間で対立、折り合いがつき「議定書」(合意)までこぎ着けるかどうか微妙だ。「気候変動枠組条約締約国会議・COP15」においてもそうであったが、やはり、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの削減数値目標で、「先進国」と中国など「途上国」との間で折り合いがつかなかったが、今回の「生物多様性条約締約国会議」においても実効性のある「議定書」という合意が得られないようなことになれば、事態はきわめて深刻と言わなければならないと思う。
地球温暖化に伴う気候変動と同様に生物多様性の急速な減少は、最早、一刻の猶予もないのである。足踏みしている時間はないし、ましてや、「生態系サービス」についての「利益配分」について議論している余地などないのである。
そもそも、自然から無償で提供されている遺伝資源を含むすべての「生態系サービス」は、人間だけのものではないのだ。むしろ、「生物多様性ついて考える」(9/4投稿記事を参照)でも書いたが、生物多様性と生態系においては、何千万の生物種の中のただの一種に過ぎないだけでなく、何の役割も果たしていない人間の存在意義などほとんどなく、「生態系サービス」の恩恵を奪い合うなどとんでもない話なのである。むしろ人間は、生物多様性を失わせ、絶滅の危機を招いた責任を全面的に負うとともに、無条件に直ちに、その保全と修復のために行動を起こすべき時であると言わなければならない。
「大絶滅の危機」が差し迫っているのに、もはや先進国も途上国もない、将来の世代のためにも後退や足踏みは許されない。日本は議長国として、また、先進国の一員としての責任を果たし、何としても「合意」のために全力を注ぐべきと心から思う。
生物多様性について考える
10月に名古屋で、日本が議長を務める、生物多様性条約第10回締約国会議(地球生きもの会議・COP10)が開催されます。また、この会議に合わせるかのように、今年4月に著名な生物学者である、エドワード・O・ウィルソン氏が『創造・生物多様性を守るためのアピール』という本(紀伊国屋書店)を出されました。「生物多様性」という私たち庶民には、あまり馴染みのないテーマですが、今私たちが身近かに感じています「地球環境問題」を考える上で大切だと思いますので、「創造」を読んだ感想と、ある数理学者に宛てたメールを紹介しながら考えてみたいと思います。
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突然のメールで失礼いたします。
私は、先だって開催されました「びわ湖セミナー」「琵琶湖~その多様な生きものを守るために~」に参加させていただきました。大変貴重な研究結果を拝聴させていただき有難うございました。
貴方様の基調講演をはじめ、7名の研究員方々からの研究成果についての報告をお聞きして、大変不躾とは存知ますが、感想を含めて、私の拙い意見を述べさていただきたく、メールを送らせていただいた次第です。
私は、サラリーマンを55才で定年退職しまして、それを契機に、田舎暮らしがしたくて、4年前(2007年3月)に、ここ高島市今津町に引っ越してまいりました。以後、ご近所のご好意で田んぼをお借りし、米作りに励んでいます現役の「百姓」でございます。百姓をする傍ら、縁あって環境保護の会に所属し、地域の環境を守る活動のお手伝いをさせていただいております。
さて、本題ですが、その前に一言申し上げておきます。私が、最近接しました書物の中に、ご存知だと思いますが、エドワード・O・ウイルソン氏が書かれた「“創造”(The Criation)~生物多様性を守るためのアピール」(2010年4月初版)があります。また、それ以前に、ガイア学説の提唱者、ジェームス・ラブロック氏の「ガイアの復讐」(2006年1月、英インディペンデンスに掲載された論文)です。ともに、著名な生物学者です。テーマが共通していますので紹介しておきますが、大変衝撃を受け、感銘したために、これから述べることは、ほとんどお二人の受け売りとお考えいただいて結構です。前置きが長くなり申し訳ありません。
今回の大きなテーマは「琵琶湖~その多様な生きものを守るために~」で、貴方様の基調講演「琵琶湖の生物多様性は今」、そして、7名の研究者の方々から、「プランクトンから見た生物多様性」と「水辺の生きものを守る」というテーマでの研究成果について発表がありました。それぞれ、たいへんな調査と研究に基づいた貴重な報告であったと思います。しかし、貴方様の講演を含めまして、生物多様性について語る際、欠かすことができない最も重要な観点(知見)が欠落していたのではないかと感じています。それは「地球温暖化とそれに伴う気候変動」についての認識と知見です。人間活動によって引き起こされた「地球温暖化問題」は、今日地球上で起こっている諸問題の元凶です。これは、疑う余地のないことです。
E・O・ウイルソン氏は著書のなかで、「『いのちある自然』が、いま深刻なトラブルの中にあります。いのちある本来の自然(Nature)とは、人類によるインパクトを受けて、なお、部分的に残されている原初の環境と生きものたちのことです。生きる自然とは、この地球上にあって、人類を頼ることなく、自らそこに存在しうるもののことです。」しかし、いま、この「地上に創造されたもの(The Creation)いのちある自然が、深刻なトラブル(大絶滅の危機)の中にあり、」「生息地の撹乱や転用を初めとする人間の破壊的な活動が現在の速度で続けば、また、気候変動が緩和されないなら、21世紀半ばまでの間に、地上の動植物の4分の1が絶滅するか、あるいは近未来における絶滅を回避できない運命にさらされる」と生物学者の一人として警告していますが、「生物多様性に極めて詳しい研究者たちは、6,500万年前の白亜紀末の大絶滅以来、最大の絶滅の激発期に入っているという点で意見が一致している」とのことです。
ところで、この地球上にはどれくらいの生物種が生息しているのでしょうか?ご存じのことと思いますが、今日までに発見された生物の種は、動物、植物、そして微生物のすべてを含めて150万から180万種の間で、既知種に未知種を加えた地上の全生物の種数に関する推定値は、最も低い値で360万種、最も多い数字では1億1200万種とのことですが、これは、長年物理学者(世界に6000人)が調査、研究の中で明らかにされた数字に過ぎず、目に見えない生物世界について、私たちの足元、少なくとも3.2kmほどの深さに至までの地下領域・未知の大固体群が形成する世界は、もう一つの、そしてある意味では地上より遥かにおおきな世界を形成しているとのことです。火星や金星、そして、取るに足らない小惑星に膨大な費用と労力をかけて探査機を飛ばすよりも、人類が今急いでしなければならないのは、地球という惑星の探査であり、破壊行為の中止です。
何が言いたいかというと、わたしたち人間は、ほとんど未知の星に棲む多くの生物の中の一種に過ぎないということです。
かけがえのない地球は、人間がまだ存在すら知らない微生物を含めて、地球上に生息しているすべての生物種が、まさに、絶妙のバランスを保ち、物理的、化学的に作用し合い、変異、あるいは進化しながら、「地球生命圏」を形成し、「自己調整する生命体」(ガイア学説)として35億年もの間、休むことなく機能させてきた、全宇宙で唯一の惑星なのです。
また、この惑星では、人間以外の生命がヒトに先行していたことは確かなことです。科学の証拠が示すように、地球上に生命が誕生してから35億年という気の遠くなるような年月で、地球上の生物の中では、人間が新参者であることは明らかです。
人間はまさに多様な生物種が形成した「生命圏」の中で、生かされているに過ぎない存在という事実を自覚すべきだということです。
E・O・ウイルソン氏は言います。「人間の創造できること、創造できるあらゆるファンタジー、私たちの作り出すゲーム、シミュレーション、叙事詩、神話、歴史、そして、そう、科学のすべては、生命圏のすべての所産に比べれば取るに足らない小さなものです。」と。
私のような凡人がこんな言い方をすると反発を招くと思いますが、つまり、私たち「ヒト」という種は、人間以外の多様な生物種が作った生命圏の中で生かされているだけで、生命圏の中での存在意義はほとんどなく、生態系からも無用の存在と言ってもよいのです。
その「ヒト」という1種が、いまや、70億に増殖し、地球の支配者のように振る舞い、人間以外の多様な生物種が作り出した自然環境と資源の所有者であるかのように、膨大な量の化石燃料を燃やし続け、ほんのわずかの間に、地球46億年に歴史の中で、一度も経験したことのない「人為的温暖化・気候変動」を招いてしまったのです。それだけではありません、食糧を得るために、森林を破壊し、農地や牧草地に変え、食物連鎖を撹乱、生物多様性・生態系まで破壊しはじめたのです。
また、ジェームス・ラブロック氏が言うように、「自己調整する生命体」としての「ガイア」がこのシステムを撹乱させ、他の生物種まで絶滅の危機に追いやりかねない、大繁殖した人間という一種を、排除、淘汰するために逆襲してきてもおかしくないのです。
学者として、生物の多様性を守ると仰るなら、その生物多様性を失わせ、大絶滅の危機を招いてしまった、人間の破壊行為(研究発表にもあります、在来魚介類の減少要因、外来魚から乱獲に至まですべて、人間の行為)をまず指摘すべきではないでしょうか。
そして、東大の山本良一教授が指摘していますように、いまや、「暴走をしはじめた地球温暖化」を如何に食い止めるかが、人類に課せられた緊急の最重要課題であり、人間の活動が招いた地球46億年の歴史の中で、最大最悪の環境破壊である地球温暖化と、それに伴う気候変動についての科学的知見を、すべての研究テーマの中心に据えるべきではないでしょうか。
少なくとも、琵琶湖の生態系の変化や生物多様性の衰退と、温暖化とくに、気温、水温の上昇に伴う影響や関連を明確にすべきではないでしょうか。
E・O・ウイルソン氏曰く「断言してよいことですが、地球の生物多様性を救うには、野生生物個体群を持続的に維持できるに十分な広さの保護地域において自然環境を保全するより他に、解決策はありません。惑星規模の箱舟役を果たせるのは、本来の自然環境(Nature)だけなのです。」
余計なことですが、地球に残された、人間以外の多様な生物種が自然環境によって、無償で人間に提供される“生態系サービス”の推定額がいくらだと思いますか?それは、世界の年間総生産、つまり、全世界の国の国内総生産の総和とほぼ同額の60兆ドルだそうです。また、それは、失われた自然環境、生物多様性を救うために、残された自然環境を守るために必要な支出額と同額です。つまり、今回のテーマ「その多様な生きものを守るために」必要な費用は、人間がこれまで自然環境から無償で受けてきた生態系サービスと同額だということなのです。
最後に、今回の貴センターの研究成果が、地球温暖化防止と琵琶湖の生物多様性を守るために活かされることを切望いたします。また、貴方様が科学者として、今果たすべき役割を真剣に考え、その真価を十分発揮されることを心から期待しております。
2010年7月30日
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突然のメールで失礼いたします。
私は、先だって開催されました「びわ湖セミナー」「琵琶湖~その多様な生きものを守るために~」に参加させていただきました。大変貴重な研究結果を拝聴させていただき有難うございました。
貴方様の基調講演をはじめ、7名の研究員方々からの研究成果についての報告をお聞きして、大変不躾とは存知ますが、感想を含めて、私の拙い意見を述べさていただきたく、メールを送らせていただいた次第です。
私は、サラリーマンを55才で定年退職しまして、それを契機に、田舎暮らしがしたくて、4年前(2007年3月)に、ここ高島市今津町に引っ越してまいりました。以後、ご近所のご好意で田んぼをお借りし、米作りに励んでいます現役の「百姓」でございます。百姓をする傍ら、縁あって環境保護の会に所属し、地域の環境を守る活動のお手伝いをさせていただいております。
さて、本題ですが、その前に一言申し上げておきます。私が、最近接しました書物の中に、ご存知だと思いますが、エドワード・O・ウイルソン氏が書かれた「“創造”(The Criation)~生物多様性を守るためのアピール」(2010年4月初版)があります。また、それ以前に、ガイア学説の提唱者、ジェームス・ラブロック氏の「ガイアの復讐」(2006年1月、英インディペンデンスに掲載された論文)です。ともに、著名な生物学者です。テーマが共通していますので紹介しておきますが、大変衝撃を受け、感銘したために、これから述べることは、ほとんどお二人の受け売りとお考えいただいて結構です。前置きが長くなり申し訳ありません。
今回の大きなテーマは「琵琶湖~その多様な生きものを守るために~」で、貴方様の基調講演「琵琶湖の生物多様性は今」、そして、7名の研究者の方々から、「プランクトンから見た生物多様性」と「水辺の生きものを守る」というテーマでの研究成果について発表がありました。それぞれ、たいへんな調査と研究に基づいた貴重な報告であったと思います。しかし、貴方様の講演を含めまして、生物多様性について語る際、欠かすことができない最も重要な観点(知見)が欠落していたのではないかと感じています。それは「地球温暖化とそれに伴う気候変動」についての認識と知見です。人間活動によって引き起こされた「地球温暖化問題」は、今日地球上で起こっている諸問題の元凶です。これは、疑う余地のないことです。
E・O・ウイルソン氏は著書のなかで、「『いのちある自然』が、いま深刻なトラブルの中にあります。いのちある本来の自然(Nature)とは、人類によるインパクトを受けて、なお、部分的に残されている原初の環境と生きものたちのことです。生きる自然とは、この地球上にあって、人類を頼ることなく、自らそこに存在しうるもののことです。」しかし、いま、この「地上に創造されたもの(The Creation)いのちある自然が、深刻なトラブル(大絶滅の危機)の中にあり、」「生息地の撹乱や転用を初めとする人間の破壊的な活動が現在の速度で続けば、また、気候変動が緩和されないなら、21世紀半ばまでの間に、地上の動植物の4分の1が絶滅するか、あるいは近未来における絶滅を回避できない運命にさらされる」と生物学者の一人として警告していますが、「生物多様性に極めて詳しい研究者たちは、6,500万年前の白亜紀末の大絶滅以来、最大の絶滅の激発期に入っているという点で意見が一致している」とのことです。
ところで、この地球上にはどれくらいの生物種が生息しているのでしょうか?ご存じのことと思いますが、今日までに発見された生物の種は、動物、植物、そして微生物のすべてを含めて150万から180万種の間で、既知種に未知種を加えた地上の全生物の種数に関する推定値は、最も低い値で360万種、最も多い数字では1億1200万種とのことですが、これは、長年物理学者(世界に6000人)が調査、研究の中で明らかにされた数字に過ぎず、目に見えない生物世界について、私たちの足元、少なくとも3.2kmほどの深さに至までの地下領域・未知の大固体群が形成する世界は、もう一つの、そしてある意味では地上より遥かにおおきな世界を形成しているとのことです。火星や金星、そして、取るに足らない小惑星に膨大な費用と労力をかけて探査機を飛ばすよりも、人類が今急いでしなければならないのは、地球という惑星の探査であり、破壊行為の中止です。
何が言いたいかというと、わたしたち人間は、ほとんど未知の星に棲む多くの生物の中の一種に過ぎないということです。
かけがえのない地球は、人間がまだ存在すら知らない微生物を含めて、地球上に生息しているすべての生物種が、まさに、絶妙のバランスを保ち、物理的、化学的に作用し合い、変異、あるいは進化しながら、「地球生命圏」を形成し、「自己調整する生命体」(ガイア学説)として35億年もの間、休むことなく機能させてきた、全宇宙で唯一の惑星なのです。
また、この惑星では、人間以外の生命がヒトに先行していたことは確かなことです。科学の証拠が示すように、地球上に生命が誕生してから35億年という気の遠くなるような年月で、地球上の生物の中では、人間が新参者であることは明らかです。
人間はまさに多様な生物種が形成した「生命圏」の中で、生かされているに過ぎない存在という事実を自覚すべきだということです。
E・O・ウイルソン氏は言います。「人間の創造できること、創造できるあらゆるファンタジー、私たちの作り出すゲーム、シミュレーション、叙事詩、神話、歴史、そして、そう、科学のすべては、生命圏のすべての所産に比べれば取るに足らない小さなものです。」と。
私のような凡人がこんな言い方をすると反発を招くと思いますが、つまり、私たち「ヒト」という種は、人間以外の多様な生物種が作った生命圏の中で生かされているだけで、生命圏の中での存在意義はほとんどなく、生態系からも無用の存在と言ってもよいのです。
その「ヒト」という1種が、いまや、70億に増殖し、地球の支配者のように振る舞い、人間以外の多様な生物種が作り出した自然環境と資源の所有者であるかのように、膨大な量の化石燃料を燃やし続け、ほんのわずかの間に、地球46億年に歴史の中で、一度も経験したことのない「人為的温暖化・気候変動」を招いてしまったのです。それだけではありません、食糧を得るために、森林を破壊し、農地や牧草地に変え、食物連鎖を撹乱、生物多様性・生態系まで破壊しはじめたのです。
また、ジェームス・ラブロック氏が言うように、「自己調整する生命体」としての「ガイア」がこのシステムを撹乱させ、他の生物種まで絶滅の危機に追いやりかねない、大繁殖した人間という一種を、排除、淘汰するために逆襲してきてもおかしくないのです。
学者として、生物の多様性を守ると仰るなら、その生物多様性を失わせ、大絶滅の危機を招いてしまった、人間の破壊行為(研究発表にもあります、在来魚介類の減少要因、外来魚から乱獲に至まですべて、人間の行為)をまず指摘すべきではないでしょうか。
そして、東大の山本良一教授が指摘していますように、いまや、「暴走をしはじめた地球温暖化」を如何に食い止めるかが、人類に課せられた緊急の最重要課題であり、人間の活動が招いた地球46億年の歴史の中で、最大最悪の環境破壊である地球温暖化と、それに伴う気候変動についての科学的知見を、すべての研究テーマの中心に据えるべきではないでしょうか。
少なくとも、琵琶湖の生態系の変化や生物多様性の衰退と、温暖化とくに、気温、水温の上昇に伴う影響や関連を明確にすべきではないでしょうか。
E・O・ウイルソン氏曰く「断言してよいことですが、地球の生物多様性を救うには、野生生物個体群を持続的に維持できるに十分な広さの保護地域において自然環境を保全するより他に、解決策はありません。惑星規模の箱舟役を果たせるのは、本来の自然環境(Nature)だけなのです。」
余計なことですが、地球に残された、人間以外の多様な生物種が自然環境によって、無償で人間に提供される“生態系サービス”の推定額がいくらだと思いますか?それは、世界の年間総生産、つまり、全世界の国の国内総生産の総和とほぼ同額の60兆ドルだそうです。また、それは、失われた自然環境、生物多様性を救うために、残された自然環境を守るために必要な支出額と同額です。つまり、今回のテーマ「その多様な生きものを守るために」必要な費用は、人間がこれまで自然環境から無償で受けてきた生態系サービスと同額だということなのです。
最後に、今回の貴センターの研究成果が、地球温暖化防止と琵琶湖の生物多様性を守るために活かされることを切望いたします。また、貴方様が科学者として、今果たすべき役割を真剣に考え、その真価を十分発揮されることを心から期待しております。
2010年7月30日