「ショック・ドクトリン」と世界経済・日本の財政危機に思う
ナオミ・クライン著「ショック・ドクトリン」上下(幾島幸子・村上由見子 訳 岩波新書)が世界中でベストセラーになっていると言う。9月8日初版で出版され、お馴染みの「天声人語」でも紹介され、日本デビューしたばかりだ。
サブタイトルには、「惨事便乗型資本主義の正体を暴く」とあり、「ピノチェト独裁政権下のチリ、ソ連崩壊後のロシア、アパルトヘイト後の南アフリカ、アジア経済危機、9・11後の米国とイラク戦争、スマトラ沖津波、ハリケーン・カトリーナ・・・・。ショック・ドクトリンというレンズを通して立ち現れる、衝撃の現代史!」とある。
20世紀後半から現在まで、世界を震撼させた様々な出来事、世界中で起ってきた、様々な紛争や政変、経済、金融・財政危機、飢餓、貧困・格差の拡大、気候変動などによる自然災害の激化など、今まさに目前で起っている出来事、そして、これから起ころうとしている事態について、この書物を通して私なりに考えてみたいと思う。
「ショック・ドクトリン」とは何か?
まずは、「ショック・ドクトリン」(直訳すると「ショック療法」となるらしい)とは何か?を本書から紹介したい。
「ショック・ドクトリンとは、『惨事便乗型資本主義=大惨事につけこんで実施される過激な市場原理主義改革』のことである。アメリカ政府とグローバル企業は、戦争、津波やハリケーンなどの自然災害、改変などの危機につけこんで、あるいはそれを意識的に招いて、人々がショックと茫然自失から目覚める前に、およそ不可能と思われた過激な経済改革を強行する・・・。」「ショック・ドクトリンの源は、ケインズ主義に反対して徹底的な市場至上主義、規制緩和、民営化を主張したアメリカの経済学者ミルトン・フリードマンであり、過激な荒療治の発想には、個人の精神を破壊して言いなりにさせる「ショック療法」=アメリカCIAによる拷問手法が重なる。」とあり、「天声人語」を引用させていただくと、要するに、「戦争や内乱、災害などの混乱に乗じ、改革と称してひと儲けを企む勢力を指し」、「茫然自失の人々をよそに、彼らは権力に取り入り、白紙に好きな絵を描く、惨事便乗型の商売は途上国に限らない。財政難で強まる官から民へ、市場まかせの風潮も好機らしい。」そして、「震災も彼らには商機だろう。そこには生活と街と産業の再建にもがく住民がいて、予算がつけば総額十数兆円の復興計画が動き出す。東北3県は、スーツ姿の火事場泥棒にもご用心である。」
惨事に乗じて、なければ惨事を起こして、金儲けする勢力
「ショック・ドクトリンというレンズを通して」1970年代以降のさまざな出来事を見れば、これまでアメリカを中心とした「自由市場主義」の巨大な勢力が、巨額の資金力を使い、どのように世界を意のままに操り、支配してきたか、そして、これからも、さまざまな惨事に便乗して、あるいは、なければ意図的に“惨事”を引き起こして莫大な利益を得ようとしているかが、明快に理解できるし、彼らの全体像が見えてくる。そして、意図的に引き起こされた、“惨事”の目的についても説明がつく。
想像するのも恐ろしいことだが、これが今世界中で起っている出来事についてのひとつの真実であり、現代文明・人間社会の現実ではないかと思う。
著者ナオミ・クライン氏は、ジャーナリストとして、綿密な調査・取材を通して「ショック・ドクトリン」上下2刊686ページに渡って、「惨事便乗型資本主義・新保守主義(ネオコン)」勢力(複合体)の正体を克明に暴いている。
著者によれば、その「ショック療法」で実施・強行される政策の基本は、徹底した「公共領域の縮小・民営化」、「企業活動の完全自由化・規制緩和」、「社会支出の大幅削減」という三位一体の政策である。
現在、野田政権が推し進めようとしている「TPP」(環太平洋経済連携(貿易自由化)協定)は、まさに、ショック・ドクトリン勢力が、1970年代以降、世界中で起きたさまざまな惨事や、大規模な国家的危機に乗じて強行してきた手法そのものであり、東日本大震災と原発事故という未曾有の大惨事と、加えて国家財政破産目前の危機に乗じて、今まさに、この国で「ショック・ドクトリン」が実施されようとしているのではないかと強く危惧する。
さらに、、世界各地で猛威を振るい始めた自然災害についても、決して無関係ではない。地球温暖化に伴う気候変動は人為的にもたらされたものであり、むしろ、自然災害による惨事は、スマトラ沖津波やハリケーン・カトリーナ襲来後の復興で大儲けしたように、「惨事便乗型資本主義勢力」にとって金儲けの絶好機なのでる。
今まさに、タイを襲っている豪雨による洪水もまた、彼らにとっては願ってもない獲物になるのではないだろうか。
「市場経済」「経済至上主義」の行き詰まりと経済、金融財政危機
奇しくも、2011年に入ってから、ギリシャ財政破綻に端を発して、EU諸国全体で経済・財政の悪化が表面化、デフォルト(債務不履行)寸前という事態に陥ったアメリカの財政危機、そして、これまで、急激ともいえる経済成長を遂げてきた、中国、インドを代表とする新興国のまさに「バブル経済」が崩壊の危機に陥り、悪性インフレを引き起こすなど、「市場原理主義」に基づく「市場経済」、及び、先進諸国をはじめ、中国、インドなど新興国が推し進めてきた、大量生産大量消費を基軸とした「経済至上主義」の行き詰まりや経済のゆがみが、株価、債券の暴落、為替・通貨の急激な変動や金融・財政危機となって世界規模で同時に起こり始めたのだ。
これらの出来事に、「ショック・ドクトリン勢力」がどのように係わっているかは定かではないが、少なくとも、これまでの市場原理主義に基づく「市場経済」や、彼らが世界各地で行ってきた、過激な「市場原理主義改革」なるものによってもたらされたものであることは間違いないところだと私は思う。
また、こうした、ほんの一握りの「惨事便乗型資本主義勢力」や国際投機集団・ヘッジファンドが災難に乗じて莫大な利益を上げる仕組みが、「改革」を仕掛けられた国の財政破綻、金融機関や企業の倒産、失業者の増大、貧困・格差の拡大を招くなど、さまざまな矛盾を生みだすことは自明のことである。
そして、彼らが残したさまざまな負の遺産やツケが、後世に、子や孫の上に降りかかってくることも確かだと思う。
日本の「株安」「超円高」と国家財政破産の危機
現在進行中の日本の「株安」、とくに「超円高」ついては、まさに投機目的で仕掛けられているもので、日本の経済や財政状態が安定しているからでは決してないのである。むしろ、破綻寸前の日本の国家財政は、「彼ら」の恰好の標的だと思う。そして、復興のメドさえたっていない震災と原発事故の被災地までもが標的にされることを心から危惧する。
しかし、そもそも恰好の標的にされる原因を作ったのは誰か?
とくに、1000兆円に迫る、気の遠くなるような膨大な借金を積み重ね、国家財政破産寸前の状態にまで悪化させてしまった責任はどこにあるのか。
それは紛れもなく、歴代の政権・政府と官僚、それを放置してきた政治家、国民の預貯金や保険料を使い、ひたすら赤字国債の購入に協力してきた金融機関、公的年金にあることは明らかだ。
そして、残念ながら、事ここに至るまで事の重大さに気付いておらず、真実を知らされないまま、幻想の中で暮らしてきた、我々庶民にも責任の一端はあると言わざるを得ない。
脱原発、食とエネルギーの自給自足をめざす、自立・循環型社会への転換
肝心なことは、早くそれに気付くことだと思う。今後予想される事態は、これまでのような対症療法的な対策では通用しないだろう。
今必要なことは、国や地方、企業や個人のレベルでも、何の生産性もない「市場経済」や「経済至上主義」の呪縛から抜け出し、原発や石油に依存する社会の在り方を見直し、食料とエネルギーの自給自足をめざす、自立・循環型の社会への転換を図ることではないか。そのためには、自らの意識改革と発想の転換を図ることが求められると思う。
待っていても何も変わらないと思う。地方、地域あるいは、最小単位の集落からでも始めるべきではないだろうか。
何れにしても、日本の国家財政破綻の危機が目前に迫っていること、その災難に乗じて金儲けを狙っている輩がいることを認識して、一日も早く行動することが肝要だと思う。
サブタイトルには、「惨事便乗型資本主義の正体を暴く」とあり、「ピノチェト独裁政権下のチリ、ソ連崩壊後のロシア、アパルトヘイト後の南アフリカ、アジア経済危機、9・11後の米国とイラク戦争、スマトラ沖津波、ハリケーン・カトリーナ・・・・。ショック・ドクトリンというレンズを通して立ち現れる、衝撃の現代史!」とある。
20世紀後半から現在まで、世界を震撼させた様々な出来事、世界中で起ってきた、様々な紛争や政変、経済、金融・財政危機、飢餓、貧困・格差の拡大、気候変動などによる自然災害の激化など、今まさに目前で起っている出来事、そして、これから起ころうとしている事態について、この書物を通して私なりに考えてみたいと思う。
「ショック・ドクトリン」とは何か?
まずは、「ショック・ドクトリン」(直訳すると「ショック療法」となるらしい)とは何か?を本書から紹介したい。
「ショック・ドクトリンとは、『惨事便乗型資本主義=大惨事につけこんで実施される過激な市場原理主義改革』のことである。アメリカ政府とグローバル企業は、戦争、津波やハリケーンなどの自然災害、改変などの危機につけこんで、あるいはそれを意識的に招いて、人々がショックと茫然自失から目覚める前に、およそ不可能と思われた過激な経済改革を強行する・・・。」「ショック・ドクトリンの源は、ケインズ主義に反対して徹底的な市場至上主義、規制緩和、民営化を主張したアメリカの経済学者ミルトン・フリードマンであり、過激な荒療治の発想には、個人の精神を破壊して言いなりにさせる「ショック療法」=アメリカCIAによる拷問手法が重なる。」とあり、「天声人語」を引用させていただくと、要するに、「戦争や内乱、災害などの混乱に乗じ、改革と称してひと儲けを企む勢力を指し」、「茫然自失の人々をよそに、彼らは権力に取り入り、白紙に好きな絵を描く、惨事便乗型の商売は途上国に限らない。財政難で強まる官から民へ、市場まかせの風潮も好機らしい。」そして、「震災も彼らには商機だろう。そこには生活と街と産業の再建にもがく住民がいて、予算がつけば総額十数兆円の復興計画が動き出す。東北3県は、スーツ姿の火事場泥棒にもご用心である。」
惨事に乗じて、なければ惨事を起こして、金儲けする勢力
「ショック・ドクトリンというレンズを通して」1970年代以降のさまざな出来事を見れば、これまでアメリカを中心とした「自由市場主義」の巨大な勢力が、巨額の資金力を使い、どのように世界を意のままに操り、支配してきたか、そして、これからも、さまざまな惨事に便乗して、あるいは、なければ意図的に“惨事”を引き起こして莫大な利益を得ようとしているかが、明快に理解できるし、彼らの全体像が見えてくる。そして、意図的に引き起こされた、“惨事”の目的についても説明がつく。
想像するのも恐ろしいことだが、これが今世界中で起っている出来事についてのひとつの真実であり、現代文明・人間社会の現実ではないかと思う。
著者ナオミ・クライン氏は、ジャーナリストとして、綿密な調査・取材を通して「ショック・ドクトリン」上下2刊686ページに渡って、「惨事便乗型資本主義・新保守主義(ネオコン)」勢力(複合体)の正体を克明に暴いている。
著者によれば、その「ショック療法」で実施・強行される政策の基本は、徹底した「公共領域の縮小・民営化」、「企業活動の完全自由化・規制緩和」、「社会支出の大幅削減」という三位一体の政策である。
現在、野田政権が推し進めようとしている「TPP」(環太平洋経済連携(貿易自由化)協定)は、まさに、ショック・ドクトリン勢力が、1970年代以降、世界中で起きたさまざまな惨事や、大規模な国家的危機に乗じて強行してきた手法そのものであり、東日本大震災と原発事故という未曾有の大惨事と、加えて国家財政破産目前の危機に乗じて、今まさに、この国で「ショック・ドクトリン」が実施されようとしているのではないかと強く危惧する。
さらに、、世界各地で猛威を振るい始めた自然災害についても、決して無関係ではない。地球温暖化に伴う気候変動は人為的にもたらされたものであり、むしろ、自然災害による惨事は、スマトラ沖津波やハリケーン・カトリーナ襲来後の復興で大儲けしたように、「惨事便乗型資本主義勢力」にとって金儲けの絶好機なのでる。
今まさに、タイを襲っている豪雨による洪水もまた、彼らにとっては願ってもない獲物になるのではないだろうか。
「市場経済」「経済至上主義」の行き詰まりと経済、金融財政危機
奇しくも、2011年に入ってから、ギリシャ財政破綻に端を発して、EU諸国全体で経済・財政の悪化が表面化、デフォルト(債務不履行)寸前という事態に陥ったアメリカの財政危機、そして、これまで、急激ともいえる経済成長を遂げてきた、中国、インドを代表とする新興国のまさに「バブル経済」が崩壊の危機に陥り、悪性インフレを引き起こすなど、「市場原理主義」に基づく「市場経済」、及び、先進諸国をはじめ、中国、インドなど新興国が推し進めてきた、大量生産大量消費を基軸とした「経済至上主義」の行き詰まりや経済のゆがみが、株価、債券の暴落、為替・通貨の急激な変動や金融・財政危機となって世界規模で同時に起こり始めたのだ。
これらの出来事に、「ショック・ドクトリン勢力」がどのように係わっているかは定かではないが、少なくとも、これまでの市場原理主義に基づく「市場経済」や、彼らが世界各地で行ってきた、過激な「市場原理主義改革」なるものによってもたらされたものであることは間違いないところだと私は思う。
また、こうした、ほんの一握りの「惨事便乗型資本主義勢力」や国際投機集団・ヘッジファンドが災難に乗じて莫大な利益を上げる仕組みが、「改革」を仕掛けられた国の財政破綻、金融機関や企業の倒産、失業者の増大、貧困・格差の拡大を招くなど、さまざまな矛盾を生みだすことは自明のことである。
そして、彼らが残したさまざまな負の遺産やツケが、後世に、子や孫の上に降りかかってくることも確かだと思う。
日本の「株安」「超円高」と国家財政破産の危機
現在進行中の日本の「株安」、とくに「超円高」ついては、まさに投機目的で仕掛けられているもので、日本の経済や財政状態が安定しているからでは決してないのである。むしろ、破綻寸前の日本の国家財政は、「彼ら」の恰好の標的だと思う。そして、復興のメドさえたっていない震災と原発事故の被災地までもが標的にされることを心から危惧する。
しかし、そもそも恰好の標的にされる原因を作ったのは誰か?
とくに、1000兆円に迫る、気の遠くなるような膨大な借金を積み重ね、国家財政破産寸前の状態にまで悪化させてしまった責任はどこにあるのか。
それは紛れもなく、歴代の政権・政府と官僚、それを放置してきた政治家、国民の預貯金や保険料を使い、ひたすら赤字国債の購入に協力してきた金融機関、公的年金にあることは明らかだ。
そして、残念ながら、事ここに至るまで事の重大さに気付いておらず、真実を知らされないまま、幻想の中で暮らしてきた、我々庶民にも責任の一端はあると言わざるを得ない。
脱原発、食とエネルギーの自給自足をめざす、自立・循環型社会への転換
肝心なことは、早くそれに気付くことだと思う。今後予想される事態は、これまでのような対症療法的な対策では通用しないだろう。
今必要なことは、国や地方、企業や個人のレベルでも、何の生産性もない「市場経済」や「経済至上主義」の呪縛から抜け出し、原発や石油に依存する社会の在り方を見直し、食料とエネルギーの自給自足をめざす、自立・循環型の社会への転換を図ることではないか。そのためには、自らの意識改革と発想の転換を図ることが求められると思う。
待っていても何も変わらないと思う。地方、地域あるいは、最小単位の集落からでも始めるべきではないだろうか。
何れにしても、日本の国家財政破綻の危機が目前に迫っていること、その災難に乗じて金儲けを狙っている輩がいることを認識して、一日も早く行動することが肝要だと思う。