今津のオヤジのつぶやき

迫りくる破局?!

2011年08月24日

 世界同時株安と超円高が続いている。「市場経済」の屋台骨・米国をはじめ、欧州、アジアなどの「市場」が揺らいでいる。
 これまで「市場経済」を牽引してきた軍事経済大国アメリカが財政危機に喘いでいる。米国債の限度額(14兆3000億ドル・約1120兆円)を上げなければ、債務不履行・デフォルト寸前の危機にまで悪化していると言う。
 ギリシャの財政危機に端を発し、欧州諸国で財政の悪化が表面化してきている。北アフリカ・中東地域の独裁政権での相次ぐ政変が今も続いている。
 また、右肩上がりに経済成長を続けてきた中国も決して安泰ではない。高速鉄道脱線事故に見られるように、安全性を度外視した強引な「成長戦略」が招いた「人災」とまで言われ、共産党一党独裁国家の威信は大きく揺らぎ、巨大利権に群がる特権階級の腐敗堕落や、これまで事あるごとに行われてきたさまざまな人権抑圧、そして、高速鉄道事故への政府の強権的な対応にたいして、国民の怒りは収まる気配すらない。

               今回の一連の動きは一過性のものではない

 どうも今回の一連の動きは一過性のものではないようだ。「市場経済」そのものの行き詰まり、貧困・格差の拡大、雇用の慢性的危機、環境の地球規模での悪化・洪水と干ばつの頻発、飢餓と食料危機、石油枯渇、移民問題、宗教対立までからみ複雑で根が深い。そして、とくに先進諸国で国家財政の基盤が根底から揺らいでいる中で起っているからだ。
 そんな中、我が国ニッポンの財政状態はより深刻で、ギリシャだの、アメリカだのと他国のことを言っている場合ではないのだ。
 政治家とマスメディアは相変わらず「菅首相が辞める3条件が整った」だの、「次の首相は誰?」だの、大震災の復興や原発事故の処理、被災者への救済などそっちのけで、能天気に騒いでいる。
このままの状態で推移すれば、間違いなくここ数年の間に起るだろう“破局的危機”を認識しているとはとても思えない。

                    避けようがない“破局的危機”

 ここ数年の間に起ると言うより、もうとても避けようがない“破局的危機”とは、この国の“国家財政破産の危機”だ。これまでも財政破綻の危機は何度も叫ばれてきた。その度に、この国の歴代政権、官僚と政治家は、何とか誤魔化し、問題の解決を先送りしてきた。先送りしてきた分、事態はより深刻だと思う。ギリシャの比ではなく、アメリカを引き合いに出すのは国情が違いすぎるので少々気が引けるが、日本の方が「借金の規模」と言い、「借金の中身」と言い、けた違いに状況は深刻だと思う。
 現在の「超円高」も、円が強い訳でも、日本の財政状態が安定している訳でも決してなく、あくまで、機関投資家や国際投機集団の投機目的や一時避難先として利用されているだけだと私は思う。

                この国の「借金」は、国民の「借金」?!

 国と地方自治体の「借金」は雪だるま式に増え続けている。震災復興と原発事故による被災者への救済等に膨大な財源も必要であり、2011年度中には一般会計上の赤字国債を含む借金は1000兆円を超えることは確実になってきた。
 なんと、GDPの約200%2倍だ。因みに、EU・ヨーロッパ連合への加盟条件の一つに、国の借金がGDPの3%以下という経済収支基準がある。ギリシャは国の借金がGDPの10%以上あるに3%以下と偽ったために財政危機に陥ったと言われている。

 さらに、実体そのものがよく分からない特別会計上の借金がどれ位あるのか想像もつかない。

 日本の借金はギリシャやアメリカと違い、いわゆる「対外債務」がほとんどなく、海外の債権者に対して「債務不履行」に陥ることはない。しかし、対外債務でないことが国民にとってより深刻な事態を招くのだ。
 対外債務であれば債権国が被害を最小限に食い止めるために、必要な支援や再建のための協力を惜しまないからだ。日本の財政破綻にたいしては海外からの支援や協力はほとんど望めないだろう。

 この国の借金の大部分は「国民からの借金」であり、不可解な話だが、国の借金は、私たち国民からの借金でもあるが、その借金を返すのも私たち国民だと言うことなる。国民の多くは「国に貸した覚えもないし、借りた覚えもない」と思っている。今のところ、この国の天文学的な膨大な借金のツケを払わされると考えている人はほとんどいないだろう。しかし、否応なしに「ツケを負わされる」ことになると言わざるを得ない。

 以前にも「財政問題」での投稿で書いたが、この国の借金、いわゆる「赤字国債」を「誰が引き受けている」のかということだが、紛れもなくゆう貯をはじめこの国の金融機関なのである。その大部分を引き受け保有している。もちろん、赤字国債購入の原資は私たち国民の預貯金なのである。つまり、「国民からの借金」と言われる所以だ。

 現在、国民の「金融個人資産」は1400兆円以上あるといわれているが、その内の1000兆円近くが赤字国債や国・地方の借金に充てられているということになる。間接的には、知らず知らずの間に国債を買わされていることになるのだ。
 そして、金融機関が残された個人資産の400兆円で赤字国債や公債、地方債を引き受ければ国民の個人資産はすべて「国の借金」に化けることになるのだ。あり得ないことが現実に起ころうとしている。いや、そうなる前に、間違いなく日本の財政は破綻することになるだろう。国の借金1000兆円超えは、まさに、デッドラインであると私は思う。

             預金の引き出しが増えれば金融機関は国債を売るしかない

 団塊の世代と呼ばれる昭和21・22.23年生まれの人たちが次々定年を迎え、年金生活を始めている。めでたく退職金を手にしたし人たちはまだよいが、会社倒産や不安定雇用で退職金など望むべくもない人たちも相当数に上るだろうことは容易に想像がつく。

 貧困・格差、雇用不安は確実に広がりを続けている。新卒者の就職が超氷河期の状態で、高齢者の再就職への道など閉ざされたままだ。収入が減ればなけなしの預金を切り崩すことになる。
 今後、高齢者が税金、医療費や保険料の負担増に加え、子や孫への生活支援など、老後の支出が増える中、年金では賄い切れず、なけなしの預金の引き出しや各種保険の見直し解約などが加速するだろうと言われている。

 また、消費が減り景気がさらに落ち込み、企業倒産と失業者の増大など、社会不安や金融不安が高まれば預金の引き出しはさらに加速し、取り付け騒ぎにまで拡大する可能性だってある。

 さらに、今回の東北大震災のような地震、地球温暖化に伴う気候変動によるさまざまな自然災害が頻発すれば、行政、企業、個人を問わず、巨額の資金が必要になることは自明の理だ。そうなれば金融機関は保有している国債など債券を売って現金に換えないと支払いができない事態も起こりうるのだ。

               国債が売れないと国家予算が組めなくなる事態に

 さらに重大なことは、国が予算を組む際に新たに発行する赤字国債を、これまでのように金融機関が引き受けできなくなるようであれば、国家予算が組めなくなる。なにしろ、国家予算の50%を赤字国債に依存しているのだ。国債が売れなければ予算を組むことも予算を執行することもできないのである。
 とくに、国民生活と直結している福祉・社会保障関連などの予算の執行がストップするようなことになれば大変なことになる。

 また、年金など「特別会計」の執行にも確実に影響がでると思う。「一般会計」も「特別会計」も基本的には表裏一体の国家財政であり、「特別会計」には、「一般会計」からの繰入金もあれば、政府短期証券という短期国債の借金もある。
 いずれにしても、国家予算が組めないという事態になれば「一般会計」も「特別会計」もないのだ。
年金の支給の制限、減額やカット、一時停止などにでもなればまさにパニック状態になるだろう。

             最も恐れる「国債の暴落」とその後に来る「ハイパーインフレ」

 いずれにしても、ここまで膨れ上がった「赤字国債・国の借金」がどうなるかだ。海外の国債保有者は中国を含め5%程度だと言われている。国債格付け会社よる「日本国債の格付け」(8月24日、アメリカの格付け会社ムディーズが日本国債の格付けをワンランク下げたと発表した)はあるが、国内で処理しているので格付けの影響はほとんど受けない。そもそも、海外の投資家の間では、金利が低く魅力がない上にリスクが高い日本の国債には興味がない。

 しかし、天文学的数字にまで膨れ上がった赤字国債を含む借金は、今年度中にもデッドラインの1000兆円を超える。アメリカのように国債発行の限度額(上限)が法律で決められていたならば、その時点で大論議が巻き起こりさまざまな措置が講じられただろうが、その上限がない。まさに、先のことなど一切考えず、歴代政権が行け行けドンドン赤字を増やしてきたのだ。

 しかし、それも最早限界だと思う。限界の最大の理由は、いままで赤字国債を一手に引き受けてきた(原資は国民の個人金融資産)金融機関がこれ以上の国債を引き受けられないのではないかということだ。当てにできる金は国民の個人資産の残り400兆円だ。
 ある有名な女流経済評論家がこの400兆円を充て込んで「年間40兆円に赤字国債を抑えれば、あと10年は持ち堪える」と言ったとそうだが、とんでもない話で、小学生の算術計算でもあるまいし、そんな単純な話ではないのだ。 
 何事にも限度・限界があるということだ。

             国民生活破綻の最悪のシナリオが現実になるかも知れない!

 金融機関が耐えられなくなり一斉に市場に国債を売り出せば、国債は暴落するだろう。国債が暴落すれば金融機関は膨大な損失を出すことになる。金融機関の損失は預金者の「損失」であり、国民生活に即跳ね返ってくる。

 実際のところ日本の国債が暴落するだろうか?経験したことがないので何とも言えないが、とにかく日本の場合はきわめて特殊であり、特異であることには違いない。つまり、国民の金融資産を無断で使ってきたという世界に例がないという特殊性。また、その事実を預金者である国民が気付いていない、認識していないという特異性は世界に類も例もないのである。

 やはり、国民がどの時点でそれに気付くかではないかと思う。国民がこのままでは「自分の預金が危ない!」と気付き預金引き出しに一斉に走ればその時に、あるいは、株暴落や為替・円売り円安に連動して債券が売られ、市場が「日本の財政が破綻する」と察して、日本売り一色の展開になるようなことになれば金融機関は堪らず国債を売るだろうと思う。

 しかし、国債の暴落は国家の一大事で、何としても避けなければならない。市場での国債の暴落を防ぐためには、日銀が国債を引き受けるしかない。
 しかし、日銀は金融機関の元締めであるが、他の金融機関と同様に巨額の赤字国債を保有している。新たに膨大な国債を引き受けるとなれば、札・日本銀行券を増刷するしか手がないのである。1000兆円にならずも、例えその10%の100兆円であっても、現金が市場や巷に溢れれば、貨幣価値の下落を招くことは明らかで、巨大津波のようなハイパーインフレーションが国民生活を直撃することになるだろう。

 それだけではない、円が紙きれ同然になれば、輸入がストップするということだ。石油はほぼ100%、食料も60%輸入に頼っている。その他にもさまざまな工業資材や原材料を輸入している。円建てでは決済できない、外貨でしか決済できなくなるのだ。日本の外貨準備高は世界第2位で(第1位は中国)、1兆427億ドル(2009年度末)あると言われているが、外貨準備高の中身は米国債なのである。すぐに使える外貨ではないのだ。しかも、円の貨幣価値が地に落ちており、「超円安」の状態で膨大な為替差損がでるだろうと思し、残念ながら額面どおりには使える外貨ではないということだ。

 ただし、外貨準備高の範囲内でIMF(国債通貨基金)からお金は借りることはできる。それで凌ぐしかないのではないかと思うが・・・・。

 いずれにしても、国債の暴落は、「国家財政破産」を意味する。インターネット上に「日本の借金時計」で「国と地方の借金額」「家計の負担額」が刻一刻と刻まれているが、日本の「国家破産の危機」が目前に迫りつつあるという事実をしっかり認識しておく必要があると思う。


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Posted by 陽ちゃん at 21:17│Comments(0)財政問題
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