今津のオヤジのつぶやき

「埋蔵金」とニッポンの財政危機を考えるー財政問題第2弾

2010年08月27日

いま、政府の「埋蔵金」に注目が集まっている。「日本には1000兆円近い借金もあるが、312兆円の」いや「700兆円の埋蔵金がある。」と豪語する女流経済評論家までいる。
「埋蔵金」を別の言い方をすれば「隠れ財産」、この方が分かりやすい。
埋蔵金・隠れ財産とは、いわゆる「特別会計」のことだ。
表の「一般会計」に対して、裏の「特別会計」ということになる。特別会計なるものが存在していることは、一般にそれなりに知られてはいるが、その実態や中身についてはよく分からない。
とにかく、複雑で、各会計間の取引もあり、相互に入り組んでおり、しかも、表向きの会計報告はない。

一般に関わりがあるのは、「労働保険」と「年金」くらいで、その他に18、合計20の名称をもつ特別会計がある。その内、09年度末に「特定国有財産整備特別会計」と「国立高度専門医療センター特別会計」が廃止され、11年度には、「登記特別会計」というのが一般会計に組み入れられることが決まっているが、労働保険と年金以外は名称すら聞いたことがない。
労働保険と年金の2つについては、それぞれ保険料を払ってきたので、なんとなく一般会計とは分け、別会計で取り扱っていることにそれほどの違和感はない。身近にあるからかもしれない。しかし、どんな仕組みになっていて、どんな実態なのかはよくわからない。

他にどんな特別会計があるか、一応名称だけでも列挙すると、「地震再保険」「農業共済再保険」「森林保険」「漁船再保険及び漁業共済保険」「貿易再保険」「交付税及び譲与税配付金」「国債整理基金」「財政投融資」「外国為替資金」「エネルギー対策」「食料安定供給」「国有林野事業」「特許」「社会資本整備事業」「自動車安全」があり、それぞれ名称のあとに特別会計が付く。

これらの特別会計は、国が行う特定の事業や特定の資金を運用する等の目的で設けられているが、ほとんどが国会の縛りもなく、監督官庁のチェックなどもなく、自由に使える資金として、やりたい放題、行け行けどんどんで、きわめてずさんな財政運営がなされているとのことだ。
民主党政権が誕生してから、「事業仕分け」でこの闇の特別会計にメスが入り始め、その実態の一部が我々国民の前に明らかにされつつあるが、全容解明にはほど遠い。しかし、闇に光が当てられたことは確かだ。かつてないことで画期的なことだと思う。

ところで、特別会計の財政規模は一体どれだけあるのか? 2010年度予算総額は、一般会計92.2兆円に対して、特別会計の予算総額は367.1兆円で、なんと一般会計の4倍という規模で、一般会計と特別会計を合わせると、2010年度の国家予算総額は、459.3兆円という膨大な金額になる。ただし、特別会計では各会計間の取引があり、重複分が約半分あるとのことだが、重複分を除いたとしても、一般会計と特別会計を合わせると、276兆円はあるということだ。

特別会計の財源はどのようになっているのか? 労働保険や年金など保険事業については、保険料などがその財源であり、一般会計からの繰入金などで運営している。それ以外の特別会計については、特定の事業による事業収入や、特定の資金を運用して得た運用益によって運営している。もちろん、事業においても、資金運用においても、黒字もあれば、赤字もある。資金に不足が出ると、政府短期証券という、短期の国債(資金繰り債)を発行し、補てんするという。
しかし、財政規模があまりにも大きいため、損失が出た場合の金額も大きくなる。とくに、「財政投融資特別会計」や「外国為替資金特別会計」(PKO)については、このご時世であるので、融資や運用で損失が出るリスクは極めて高い特別会計ではないかと思う。

さて、特別会計が「埋蔵金」や「隠れ財産」と言われるのはなぜだろうか?何を指して「埋蔵金」や「隠れ財産」というのだろうか?
そのひとつが、余剰金を貯め込んだ「積立金」だそうだ。総額182兆4000億円、一般会計の税収(10年度37兆円)のほぼ5年分に達する「積立金」があるという。この積立金は現在ある20の特別会計の剰余金を積立ててきた合計であるが、単に積立金がこれだけあるというだけで、これすべてが「埋蔵金」だとは単純には言えないし、「年金特別会計」(127.8兆円)などは将来の支出に備える積立金なので埋蔵金とは言えない。いわゆる、貸借対照表の資産の内容、中身、そして、負債の内容、中身を見てみないと、それぞれの「特別会計」が持つ目的以外に「使える資金」がいくらあるのかは正確には言えないということだ。
たとえば、「財政投融資特別会計」の資産の部にある貸付金は190兆818億円だが、貸付先に一般会計19.6兆円をはじめ、住宅金融支援機構に28兆円、最も大きいのが地方公共団体への59兆円ある。国も地方自治体も大変な借金をかけているし、住宅金融支援機構への貸付も絶対安全な貸付先とは言えないのだ。

ところが、「埋蔵金」の在りかは、どうも「財政投融資」と「外国為替資金」の2つの特別会計にあるらしい。確かにこの2つは、財政規模がけた外れに大きい。運用の仕方も、極めて「投機的」で、リターンも大きいが、リスクも高い。また、それだけに「利権」も大きいということだ。
「財政投融資特別会計」については、前に述べたが、「外国為替資金特別会計」は、政府が金融市場で外貨を取引して為替相場を動かす「市場介入」の際に使われる資金である。

ある週刊誌によると「特別会計に眠る埋蔵金が312兆円」あり、上記の2つの特別会計にその「埋蔵金」が眠っているというのだ。
金額の大きさにも驚かされるが、本当にそれが「埋蔵金」と言えるようなものなのか、私たち庶民には、にわか信じられない話だ。
某週刊誌によると、2008年度「財政投融資特別会計」の貸借対照表が公表されていて、それによると、現預金、有価証券、貸付金、出資金等の総資産合計が、211兆9475億円あり、「外国為替資金特別会計」についても、外国債など有価証券が90兆円、現預金が31兆円、資産が121兆円で、2つの特別会計(重複分20兆円を除く)を合わせると、312兆円になるとのことだ。
また、冒頭の女流経済評論家、ある民放のテレビ番組にパネラーとして出演され、その中で話していることなので名前を伏せる必要はないので申し上げるが、カリスマ経済評論家と言われている勝間和代氏が、並みいる国会議員の先生方や専門家の前で、日本の埋蔵金・隠れ財産がなんと「700兆円」あると豪語されていた。(あまりにバカバカしいので少し見ただけでテレビを切った)

「埋蔵金が眠っている」という限り、丸丸手付かずで地下の金庫にでも眠って(保管)いるのかと想像するのだが、しかし、そんな都合のいい話がある訳はないのである。
「財政投融資」の貸借対照表を見ると一目瞭然で、資産勘定には、貸付金が190兆円もあるが、一方の負債勘定には「公債」として、国債の一種で、「財投債」を発行して借りたお金が、131.1兆円もあり、貸付金の70%近くが借金であることが分かる。

また、「外国為替資金」についても、運転資金の原資は、108兆円が「政府短期証券」を振り出しての借金なのだ。何のことはない、2つ合わせて、借金が240兆円近くあるということだ。
「埋蔵金・312兆円」の76.9%が借金であり、一般会計で表に出ている973兆円以外に、少なくとも2つの特別会計だけで、240兆円もあるということになる。
しかも、先ほども述べたように、「財政投融資」、「外国為替資金」のいずれの特別会計も、貸し倒れや、為替差損等のリスクが付きまとうということであり、こんな当てにならない「埋蔵金」はない。「隠れ財産」どころか、新たな「隠れ借金」を背負わされることになるのではないか?と心配するのは私一人ではないように思う。

結局、「埋蔵金」なるものは“幻想”に過ぎない、日本の財政は大丈夫と思わせ、国債をさらに買わせることがその一番の狙いであると、私は思う。現に証券会社やゆうちょ銀行をはじめ金融機関が、預金者に対して必至の売り込みをしているのを見れば明らかだ。
第一これだけの巨額の金が眠っている訳がない。日本の国家財政の“裏側”には、それこそ大変な『利権』が渦巻いており、国家財政に群がる利権屋集団が放っておくはずがないのだ。
特別会計の財政規模が一般会計の3倍以上もあるということは、原資が赤字国債と政府短期証券であることから、借金の規模も相当あると考えるほうが自然だ。
「国債は“親方日の丸”で大丈夫」ではなく「国債は“親方火の車”で危ない」というのが正直なところだろう。
1っ説には、表向きの一般会計上の約1000兆円と合わせて、優に、2000兆円は超えているだろうと言われているのである。

最後に、日本の財政問題の恐るべき実態を暴いた本がある。読まれた方もいると思うが、アメリカの経済誌「フォーブス」アジア太平洋支局長・ベンジャミン・フルフォード氏の著書、「泥棒国家の完成」だ。タイトルからして凄い。日本国家にとって、極めて「不都合な真実」『政・官・財・ヤクザの癒着の構造』の深部を、歯に衣着せ表現で暴いている。もし、興味がある方は読んでみる価値はあると思う。
いずれにしても、「埋蔵金」には裏があり、「埋蔵金」どころかとんでもない「隠れ借金」が国民の知らない所で作られているということだ。それだけでなく、日本の国家財政は、空恐ろしい、極めて深刻な事態になっているものと推測されるということである。

「埋蔵金」や「隠れ財産」の存在を口にし、「日本財政は大丈夫」「日本の国家財政が破綻するわけがない」と主張する経済評論家、金融機関や証券会社もたくさんあるが、日本の財政危機や破綻を明言する経済評論家や経済金融の専門家も少なくないし、新聞報道もある。専門家の中には、「2014年日本国家破産」警告編・対策編(浅井 隆著)という本まで出している。

国際通貨基金(IMF)によれば「日本の持ち時間は3,4年」しかない。国債暴落、凄まじい円安、そして、ハイパーインフレを招く「国家破産」が、間近に迫っているということだろう。
私はやはり「地球温暖化」と同様に、予防原則に基づいて、その日(Xday)は必ずやって来るものとして、心の準備だけはしておこうと思っている。

またまた、長~い文章、最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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Posted by 陽ちゃん at 09:59│Comments(2)財政問題
この記事へのコメント
こんにちは、

今回は「埋蔵金」の話ですか、

博学ですね。


「泥棒国家完成」読んでみます。

残暑厳しき折、ご自愛下さい。

櫻本 龍人
Posted by 櫻本 龍人 at 2010年08月28日 12:51
いつも辛抱強くお付き合いいただきありがとうございます。

今週から、コシヒカリの収穫がはじまりました。私の住む集落では
少し他の集落よりは早いようです。

私の方は9月の10日前後の稲刈りになると思います。
今は稲刈りに向けて田んぼの水を抜き、干しているところです。
稲刈りまでに1,2度流し水をやり、最後の1週間は完全に干し
切り、お世話になっている農家の方にコンバインをお願いして刈り
取る予定です。
Posted by 陽ちゃん陽ちゃん at 2010年08月30日 07:46
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